幾何公差の表記作法、あなたはしっかり理解している? いいかげんに幾何公差を指示するとトラブルのもとになるので要注意だ。
前回出題した【問題5】の解答を以下で解説していきます。幾何公差のイメージは理解していても、表記作法を厳密に理解していない技術者はたくさんいると思います。いいかげんに幾何公差を指示してしまうと解釈が異なりトラブルのもとになりますよ。本課題を通して、JIS製図における幾何公差の作法を習得してください。
同一面上の離れた形体に平面度指示する場合、出題された平面度の表し方では、左右それぞれの面が独立して平面度0.1mm以内にあればよいという意味になります。ここでは取り付け面であると思われるため、左右共通に0.1mm以内にある方がベターですので、共通領域を表す「CZ」を幾何公差値に続けて記入します。
平面度は形状公差ですから、データムは必要としません。平面度とは「その面を絶対値、つまりその面が寸分も狂いがない“真っ平ら”だと考えると、そこからどれだけずれても(あるいはゆがんでも)よいか?」を規制するものです。
本課題で示した下面を「データムA」として設定するのですが、寸法線の延長線上にデータムを付与すると、その寸法の中心線(または中心平面)をデータム面と定義してしまいます。ここでは明らかに下面を指示しなければいけないため、寸法線から明らかに離した位置にデータムを指示しなければいけません。
複数の幾何公差が相互関係にあるとき、「位置公差>姿勢公差>形状公差」の関係が成り立ちます。本課題では、姿勢公差である平行度の公差値より形状公差である真直度の方に厳しい数値を与えなければいけません。
旧JISでは中心軸線上にデータムを指示することができましたが、現在のJISでは中心軸にデータムを直接指示することができません。軸線をデータムとする場合は、寸法線の延長線上にデータムを指示しましょう。
傾斜度の角度寸法は理論寸法として表さなければいけません。理論寸法を表すため角度寸法を四角い枠で囲みます。
傾斜度公差にかかわらず、幾何公差値は範囲を表します。従って角度で幾何公差を指示できないため、理論的に正しい角度からのずれ幅を規制しなければいけません。ここでは、理論的に正しい60度の線を中心にして±0.05mmの領域に斜面が入っていればよいことになります。
正面図で斜めに開いた穴でも右側面図から見て直角であってほしい場合、データムBだけを基準にすれば、360度の中でどの方向に開いていてもデータムBに対して直角であればよいことになります。鉛直方向に直角度が欲しい場合は、鉛直を定義するためデータムAを参照します。今回の解答例では、第1優先をデータムB、第2優先をデータムAとしましたが、設計意図によっては逆になる場合もあります。
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