断面は、忠実に投影しない方が正しい場合もあるの?演習系山田式 機械製図のウソ・ホント(3)(1/2 ページ)

CADでは自動で断面図を作ってくれるが、甘えてはだめだ。無駄なく正確な図面が描けているか、常に確認を怠らないようにしよう。

» 2008年04月09日 00時00分 公開
[山田学 ラブノーツ/六自由度技術士事務所,@IT MONOist]

 前回出題した【問題2】の解答を下記で解説していきます。今回は、断面図や図形の省略、矢示法、ピッチ円上の穴の図示など、知っておきたい製図の作法が満載です。

【問題2】の解答

ポイント1

 尺度をN.T.S(Not to Scale)として、実寸法と投影図の大きさが一致(合同あるいは相似)していない投影図を描くことは、機械図面として適切であるとはいえません。N.T.Sは電気関係の図面に見られることがあります。機械設計者として、尺度を明確にして投影図を描くように心掛けましょう。

ポイント2

  まず全体の投影図を見渡して、部品の形状を漏れなく伝えているかを確認しなければいけません。パッと見では問題ないように見える投影図も?の補助投影図がなければ、その面の形状を明確に判断することができません。左側面図に破線で形状を表すことも可能ですが、見やすい図面とはいえません。解答例では、正面図の右側に補助投影図を追加しました。正面図から中心線で補助投影図を結んで関連性を示してあげます。

 投影図を描くことを面倒くさがらず、形状を正確に伝えるために必要最小限の投影図をどのように表せばよいかを常に考えましょう。

ポイント3

  本部品は側面から見た形状は左右対称形状であり、その基本となる中心線は一目瞭然(りょうぜん)です。このように基本中心線が明確な場合は、切断面を表す切断線を記入しません。従って左側面図の矢印とアルファベット、切断線である基本中心線両端の太い実線、ならびに正面図で断面を指示した「A‐A」は省略します。

ポイント4

  同一部品の断面を表すハッチングの向きは合わせなければいけません。向きを変えてしまうと別部品の意味にとらえられる可能性があり、図面の読み手を混乱させてしまう危険性があります。また断面図には必ずハッチングを使う必要はありません。理解が難しいと判断したときに使えばよいと思います。

ポイント5

  JISでは断面にできないものがあります。代表的なものに軸やボルト・ナットなどがあります。補強に用いられるリブも断面にすることができません。断面図としてリブを表す場合、解答図例のように断面にせず外から見た図としなければいけません。

ポイント6

  ピッチ円状に穴のある部品を断面にしたとき、そのピッチ円が作る円筒を表す細い一点差線と、投影関係にかかわらず片側にその穴を図示します。JIS製図特有の作法ですので覚えておきましょう。

ポイント7

  矢示法に用いるアルファベットは、図面を正面から見て真っすぐに描きます。アルファベットはAから連続で使う方が、図面を見る人にとって理解しやすいといえます。そのため本例では、ほかにアルファベットがないためAに修正しました。

ポイント8

  対象図示記号(2本の平行細線)を用いて図形の半分を省略する場合は、図形は対象中心線から飛び出してはいけません。逆に対象図示記号を用いないときは、対象中心線から少し飛び出して途中で線を切っておきます。

ポイント9

 ねじの細い線はやむを得ない場合を除いて、円の右上4分の1部分を切り欠きます。ピッチ円状にあるねじをCADで作成する場合、1カ所を基準に「回転コピー」を使ってコピーしてしまうと右上の切り欠きの方向がずれるので注意してください。

ポイント10

 矢示法を使って指示する投影図は、矢を向けた方向に投影図を展開しなければいけません。矢示法を使うといって投影方向がリセットされるわけではないのです。

ポイント11

 形状の変化点には線が表れます。本例では、Rでなだらかにリブが合流していないので形状として線を描かなければいけません。

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