部品図をおざなりにする者は、不良品に泣くデキるエンジニアのCAD設計(5)(1/3 ページ)

設計の概念を勘違いしているならば、CADを使う意味もなく、残業続きの日々となる。20年のキャリアを持つ技術士が、あなたをデキるエンジニアにすべく、設計の考え方を根底からたたき直す。(編集部)

» 2007年12月07日 11時00分 公開
[山田 学ラブノーツ/六自由度技術士事務所]

次のステップへ進む前に、みんなで振り返りを

 前回のデキるエンジニアのCAD設計(4)の中で、3次元CADの特徴を生かした使い方を説明しました。

 3次元CADを使って、干渉チェックや重量計算、機構解析・強度解析などが比較的簡単に行えるようになったことで製品開発期間が劇的に短縮しました。ところが、日夜忙しい設計者は3次元CADで計画図を描くことだけで精いっぱいです。そのため機構解析や強度解析などは、設計者とは別に専任者を設けて協力して開発を進めるスタイルを取ることが一般的だと思います。

 さらに、設計者の知らないところでも3次元のデータを加工に利用したり、ドキュメント作成に利用したりと、もはや3次元CADは設計者だけの図を描くツールではなくなったのです。

 そのため、さまざまな部門の知恵を集中して、より有効な利用方法を検討する必要があります。設計者は、いざ開発がスタートしてしまうと自分の仕事で精いっぱいとなり、全体を見渡す余裕がなくなります。

 そこで、「プロジェクトの振り返り」が良い機会になります。製品開発が完了し、生産ラインでの初期不良も落ち着いたころには、開発メンバーの多数はすでに次の機種の開発に進んでいることが一般的です。このように自然と人が移動していくことが開発のスタイルですが、必ずプロジェクトの総まとめとして参画したメンバー全員で、良かったこと悪かったことの振り返りを行うことで、次機種への開発スタイルのフィードバックができます。

 この機会を利用して、建前の3次元CADの利用法よりも、自分の会社の開発スタイルに沿った最適な利用方法を検討したいところです。そのため、2日から3日程度の振り返り期間は必要であると思います。

 3次元CADを使った設計は、以前説明したように、2次元CADを使った設計に比べて時間がかかります(図1)。しかし、その時間も十分報われるぐらいの効果を得られるポテンシャルを持った画期的なツールです。「なんとなく3次元CADを使っている」という意識では宝の持ち腐れになってしまいます。

ALT 図1 設計期間そのものは短縮する(“第3回”より)

 さらに、3次元CADを使ってしまったがために、「2次元の図面は時代遅れ」という意識が芽生えますが、残念ながらそうではありません。

 将来、3次元CADのモデルデータの中に寸法公差や幾何公差の情報が表現できる(図2)と考えられますが、現状では設計したサイズや形状などを部品図として紙の図面に表現するしか手段はないのです。

ALT 図2 3次元CADのモデルに寸法公差と幾何公差を指示した例
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