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» 2007年10月19日 00時00分 公開

メカ設計者たちよ、ニッポンの製造業を救え!(上)エンジニアスジャパン 加藤社長インタビュー(2/2 ページ)

[小林由美,@IT MONOist]
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――これらの問題をどのように改善していくべきでしょうか。

 現状のように生産工程ではなく、設計初期の段階で品質の作り込みをすることが大事だと思います。つまり「『現場の力』から『設計の力』にシフトしていく」、これがすなわち「設計・製造プロセスを変える」ということだと思います。

 「タグチメソッド」で有名な田口玄一博士も、「品質は、設計されるべきもので、検査されるべきものではない」といっているのです。

図1 CAEのフロントローディング(Up-Front CAE)

 設計初期段階でCAEを活用し、 タグチメソッドや「シックスシグマ」など統計的な手法を駆使しながら、品質や性能の安定化を図ればいいと思うのです(図1)。

 日本の設計現場では、CADで形状を決めてから、CAEによる解析を行います。つまり、形状の寸法が決定したらもうほとんど変更せず、材料の板厚と材料の定数ぐらいしか変更しないのです。ある力を加えたときに、この式を解けば、変位が分かります。次に、それを微分して速度を算出します。そして、その微分をしてその加速度が分かりますね。ひずみや応力も、そのように計算します。そのデータから、設計した形状の強度が分かるということになります。

 しかし本来は、設計時にCAEを使いながら、最適な速度や加速度、変位 が出るようにする、つまり、製造に最適な強度や精度で製造できる形状を決めるべきなのではないでしょうか?  当然、材料のばらつきも、組み立てによる誤差も見込んで設計する必要があるわけです。

 その設計実例が、次の図(図2)です。

図2 GEの設計したタービンブレードの3次元モデル:右上(青色)はCAEを設計初期段階で使い設計したもの、右下(白色)は通常多いタイプのタービンブレード

 これは、米General Electric(GE)が設計した、ボーイング787に使われるGEnxジェットエンジンの「タービンブレード」です。

 この形状(図2、青色の3次元モデル)を、とある国内のメーカーでタービン設計をしている人に見せてみました。その人は「『タービンブレード』という部品が『こういう形(図2、白色の3次元モデル)だ』と思い込んでいた」というのです。じっくり考えた後、「なるほどな。これは空気特性が良くなるはずだ」「強度も高まるし」といっていました。

 このように、モデルとしてできてみると納得できるのですが、おそらく人間の頭の中だけだと、既成概念もあって簡単には想定できないでしょう? 設計者自らもCAEを最適化に使い、従来に比べ可能なかぎり多くの設計パターンを検討すれば、このような形状も設計可能です。

――設計者は、CAE活用も統計学も考えている余裕がないのでは? 御社の考えている解決策は?

 現場力や熟練者の知識やノウハウ、経験などをデータベース化し、標準化するシステムの構築をしなくてはいけないと思います。また、いまやどこの会社もマルチベンダ環境なので、それに対応できるよう、システムのフレームワーク(インフラストラクチャ)にオープン性を持たせることも重要だと思います。

 もう1つ、当社が主張している大事なキーワードに、「テンプレート化」があります。過去の実績や本職の解析技術者によるデータを基に解析テンプレートを作り、それを社内や社外で共有化するのです。

 そうすることで、解析や統計に詳しくない設計者でも、解析や統計的処理をすることができるようになるでしょう。設計者は、当分テンプレートを使うことにより解析を行うでしょうが、やがて、テンプレートに込められた知識そのものも吸収していくでしょう。

 昔よくあった「徒弟制度」は、いまの時代では成り立たないと思います。にもかかわらず、いまだに徒弟制度のような体制を取っている企業さんが多いようですが……。

――機械設計者自身に関しては、具体的にどのようなことを実践していったらいいでしょうか?

 従来の設計手法にとらわれず、イノベーティブな発想を設計業務にどんどん取り入れてほしいと思います。そのためには設計技術ばかりではなく、解析技術や統計論もきちんと認識して設計していく、あるいは生産を考えていくべきだと思います。

 それと同時に、若い人の方から、マネジメントやトップに対して改善提案を呼び掛けていくことも大事でしょう。「いまのままの設計では。もう“絶対に”限界が来ていますよ!」と強く訴えるべきではないかと思います。

――「変わってくれ!」と若い人から上司に直接働き掛け、そして理解してもらい、動いてもらうのは、実際、難しいことではないかと思うのですが。

 確かにそのとおりだと思います。それでもやはり、若い人たちから考えを変えて、行動を起こしてほしいと思います。

 業界で長い間かけてたくさんの経験を積んできた人にとって、自分がやってきたことや成功してきて学んだことをひっくり返すようなことを認めるには、相当な勇気が要るのではないでしょうか。「いや、別に危機とまではいえないと思うが」「なぜ“いま”変えなければいけないの?」と、つい考えたくなるでしょうね。

 そのうえ、いったんマネジメント職に就くと、設計や生産など現場のことは部下に任せ、財務的なことを考えることのみに集中してしまう人も多いのです。

 しかしながら、やはりもう1度、設計・生産の現場の現実をマネジメントやトップの人自身の目できちんと直視するべきときが、すでに来ているのではないかと思うのです。

 「どうすれば、イノベーションができるか?」、設計・生産現場も、マネジメントも、そしてトップも、すべてをひっくるめた企業全体が一丸となって問題に取り組んでいくようになれば幸いだと思います。

 「シックスシグマなんて経営論上の話で、設計業務にあまり関係はないのでは?」そう考えているのは日本だけらしい!? 次回の「下」では、お隣・韓国における製造現場事情を取り上げながら、製造設計のあり方について話して頂きます。(次回に続く)

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