組み込みの「いま」が凝縮された展示会、ESEC。今年は、新たな市場に向けて動き出した各社の動向や新製品が見どころ
毎年、6月中旬から月末にかけての期間は、組み込み関連企業による新製品やアライアンスの発表が急増する。もちろん、ESECの開催に合わせるためである。各社のプレスリリースをウオッチしていれば、ESECの見所が見えてくる。今年は、「DLNA」という文字列がキーワードの1つを構成していた。
DLNA(Digital Living Network Alliance)とは、情報家電やPCをホームネットワークで接続し、動画や音楽などを相互利用するための仕様策定を目的とした業界団体である。ソニーや東芝などの家電メーカーに加え、インテルやTI、マイクロソフトなど、さまざまな分野の企業が参加している。
DLNAが策定したガイドライン1.0が発表されたのは、2004年6月。2006年のESEC直前に登場した新技術というわけではない。ガイドラインの内容も目新しいものではなく、見慣れた単語で構成されている。通信手段はイーサネットあるいは802.11a/b/g(無線)で、通信プロトコルはTCP/IP(IPv4)。送信するメッセージはXMLで、そのメッセージやメディアをHTTP 1.0/1.1で転送する。デバイスの接続とメディア管理にはUPnPを使い、メディアフォーマットはMPEG-2(動画)とJPEG(静止画)を利用する。DLNAガイドライン準拠をうたった製品もすでに市販されている。
では、なぜ「いまDLNA」なのか? 「2005年9月にDLNAの認証が始まったことが大きい」というのが出展各社の一致した意見。それから諸般の事情をクリアし、発表できる体制が整う時期とESECの開催がタイミング的にちょうどよかったというわけだ。
この分野では、デジオンのDLNAミドルウェア「DiXiM」がほぼ独走状態にある。ESECでは、このDiXiMとOS、ハードウェアで構成されたソリューションを展開するブースと、DiXiMと競合する独自のDLNAミドルウェアを出展するブースに分かれる形となった。
ソリューション展開を行っていたベンダは、ウインドリバーとエルミック・ウェスコム。ウインドリバーは、ESEC初日の6月28日に発表したばかりのDLNA対応ホームネットワーク機器向けソリューションを展示。同社のLinuxプラットフォーム「General Purpose Platform, Linux Edition」とフリースケールのプロセッサ(PowerPC e300コア)、DiXiMを組み合わせたものである。定評のある製品で固められているため、すぐにアプリケーション開発に入れるだろう。
エルミック・ウェスコムは、「DiXiM for ITRON」を展示。同社のITRON仕様OS「ELX-ITRON」とTCP/IPスタック「KASAGO TCP/IP」にDiXiMのITRON版を搭載したものである。ルネサステクノロジ製のSH7650リファレンスボードを合わせた「DLNA/ITRONプラットフォーム」という展開も検討しているという。Linuxの場合はウインドリバー、ITRONの場合はエルミック・ウェスコムで、ハードからOS、ミドルウェアまでそろうというわけだ。
富士通ブースの一角では、「DLNAミドルウェア(仮称)」が参考出展されていた。ミドルウェアだけでなく開発環境などのツールも含まれる。セットメーカーの反応は上々だが、一方で「DLNAって実際どうなの?」と探っている面もあるという。
ACCESSもまた、発表したばかりのDLNAソリューション「NetFront Living Connect」を出展していた。UPnPやDLNA over HTTPなどのプロトコルおよびAPI群で構成されたDLNAミドルウェアである。CPUやOSに依存しておらず、移植性が高いとのこと。
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