習うより慣れろ。まずはT-Engineプログラミングを体験しよう。今回は、環境構築から“Hello, world”のコンパイルまで
本連載では、Teaboard/ARM920-MX1(以下Teaboard)というボード(環境)を使ったT-Engineプログラミングの初歩を紹介していきます。この連載を機会に、T-Engineプログラミングを実際に体験してみてください。
今回は、本連載の想定環境であるTeaboardを紹介した後、実際に最も簡単なプログラム“Hello, world”を実行するところまでを説明します。第2回以降では「T-Engineプログラミング入門」の表題どおり、T-Engine上での具体的なプログラミングに進みます。割り込みを使ったプログラミングなど、組み込みの世界特有の技術にも触れていく予定です。
T-Engineフォーラムは、約500社(現在)で構成される組み込み業界最大の団体です。同フォーラムが公開している標準リアルタイムOSが、「T-Kernel」です。日本の組み込み分野で従来最も使われてきたITRONをベースに、モジュール化やミドルウェア流通機能などを取り入れた最新の組み込み用OSです。
T-Kernelを使って、組み込みソフトウェアを効率よく開発するための標準プラットフォームが「T-Engine」です。T-Engineでは、ソフトウェアの再利用性を高めるため、リアルタイムOS(T-Kernel)の仕様に加えて、デバイスドライバやミドルウェア、モニタプログラム(T-Monitor)、開発評価用ボード(標準T-EngineボードおよびμT-Engineボード)のハードウェア仕様や周辺機能(USB、PCMCIA、eTRON、LCD、音声)など、広範囲の標準化が行われています。その一方で、組み込み分野におけるCPUの多様性を反映し、1種類のCPUに限定していません。実際にさまざまなCPUを用いたT-Engineボードが市場に出ており、用途に応じて選択できます。CPUは違っても、いずれもT-Kernelを用いており、APIレベルで同一のインターフェイスを実現しています。
T-Engineプロジェクトでは、「標準T-Engineボード」および「μT-Engineボード」のハードウェア仕様を標準化しています。ただし、これらのボードはあくまでも「ソフトウェアの開発を先行して行うための開発評価用ボード」であり、最終的な組み込み機器のハードウェア仕様を定めるものではありません。T-Kernelを搭載したT-Engineの応用製品のハードウェア仕様は自由であり、実際にキューブ型やパネル型など、さまざまなT-Engine応用製品が出ています。こうした応用製品を「T-Engine Appliance」と呼びます。
本連載で使用するTeaboardも、T-Engine Applianceの1つです。CPUチップに内蔵された周辺機能を活用することで標準T-Engineボードに比べて部品点数を減らし、ハードウェアの大幅なコストダウンを実現しています。一方、付属するソフトウェアや開発環境はT-Engine開発キットと同じ構成になっています。T-Kernelの載った開発環境付きボードとしては、現在最も低価格な製品の1つです。
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