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究極の災害救助ロボットと産業ロボットを目指す〜WRS2018インフラ/ものづくり部門World Robot Summit徹底解剖(3)(1/2 ページ)

東京オリンピック・パラリンピックが行われる2020年、新しいロボットイベント「World Robot Summit(WRS)」が開催される。本連載では、このWRSについて、関係者へのインタビューなどを通し、全体像を明らかにしていく。第3回は4つある競技カテゴリーのうち、「インフラ・災害対応」部門と「ものづくり」部門の2つについて説明する。

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⇒WRSの全体像の解説はこちら

 「World Robot Summit(WRS)」のプレ大会が、いよいよ2018年10月17〜21日、東京ビッグサイトにて開催される。WRSのロボット競技会は4つの部門で構成されるが、前回の記事で「サービス」部門と「ジュニア」部門を紹介したので、今回は残る「インフラ・災害対応」部門と「ものづくり」部門の競技内容について説明しよう。

トンネル事故の救助活動にロボットが挑む

 インフラ・災害対応部門は、レスキューロボットによる競技である。競技としては、「プラント災害予防チャレンジ」「トンネル事故災害対応・復旧チャレンジ」「災害対応標準性能評価チャレンジ」の3つを実施。これらについては、競技委員長である田所諭氏(東北大学大学院 情報科学研究科 教授)に話を伺った。

田所諭氏
田所諭氏(東北大学大学院 情報科学研究科 教授)

 この部門は、インフラの日常点検の自動化や、災害/事故の発生時の救助活動がテーマ。なぜインフラ点検と災害対応が同じ部門になっているのか、疑問に思う人もいるかもしれないが、これら両者のロボットは、過酷な環境で動作する、階段の昇降も可能な高い走破性能を持つなど、技術的な要素はかなり共通する。

 そして実用化を考えた場合、ロボットを災害対応だけにしか使わないのであれば、稼働率が低すぎて、本格導入の障壁になりかねない。しかし平常時にはインフラ点検に利用しておいて、非常時に災害/事故現場に派遣できるのであれば、無駄がない。このような形で普及が進む可能性もある。

競技フィールドのレイアウト
競技フィールドのレイアウト。パイプ、タンク、ボイラーなどが並ぶ(クリックで拡大) 出典:経済産業省、NEDO

 1つ目のプラント災害予防チャレンジでは、製造、製油、製鉄などのプラントにおける日常点検の自動化や、災害発生時の対応を行う。日常点検では、メーターの値を読む、バルブを開閉する、などの作業を実施。また、ガス漏れや水漏れなどの異常が発生した場所の探索や行方不明者の捜索などを行う。

 ロボットを巡回させるより、IoT(モノのインターネット)化した方が良いのでは? と思ったのだが、田所氏によれば、「私もそう思って現場で質問したが、設備を入れ替えてIoT化するとコストが高くなりすぎ、ロボットの方が低コストで実現できるという答えだった」とのこと。現場からのニーズは高く、海外ではすでに「ARGOS Challenge」という競技会も行われている。

 2つ目のトンネル事故災害対応・復旧チャレンジは、トンネル事故を想定した競技だ。2012年に笹子トンネルで発生した天井板落下事故はまだ記憶に新しい。高度経済成長期に作られたトンネルや橋は老朽化が進んでおり、今後も同様の事故の発生が懸念されている。この競技は、そうした脅威への対応を狙ったものである。

 この競技については、バーチャル環境で実施される。動力学シミュレーターとしては「Choreonoid」を使用。2015年に開催された「Japan Virtual Robotics Challenge(JVRC)」と同様で、その後継競技といえるが、「バーチャル空間をよりリアルにして、さらに難しくなっている」(田所氏)という。

競技はバーチャル空間で実施競技はバーチャル空間で実施 競技はバーチャル空間で実施。ハードレベルの課題が用意されている(クリックで拡大) 出典:経済産業省、NEDO

 競技では6つのタスクを用意。障害物を乗り越えてトンネル内部に進入し、車両の調査、救助活動、消火作業などを行う。ロボットのモデルとしては、早稲田大学の「WAREC-1」、大阪大学の双腕型ロボットが用意されているが、オリジナルのモデルを利用しても構わない。

 バーチャルだと、狭い画面の中で競技が進むため、来場者のウケはいまひとつになりがちだが、実は結構面白い。実機と違い、転倒による故障を気にする必要がないので、より攻めた動きを見ることができるし、その結果として転倒も多い。ただ、今回のプレ大会はバーチャルだが、本大会はリアルで行う可能性もあるとのことだ。

バルブの開閉など、さまざまなタスクで競技を行う
バルブの開閉など、さまざまなタスクで競技を行う(クリックで拡大) 出典:経済産業省、NEDO

 3つ目の災害対応標準性能評価チャレンジは、目的がやや特殊。目指すのは、競技を通して、ロボットの性能を評価するための手法(STM)を確立することだ。例えば、自動車であれば、速度や燃費などの指標があり、それを参考に製品を買うことができる。ロボットを実用化するときにも、やはり同じような“物差し”が必要になるだろうというわけだ。

 標準的な指標があれば、ユーザーはロボットを比較して選びやすくなる。一方、開発者側としても、開発目標が明確になるので作りやすくなるというメリットがある。現在、レスキューロボット向けには、米国国立標準技術研究所(NIST)が開発したSTMがあるが、プラント向けには無い。そこで、プラント向けのSTMをターゲットにしている。

 日本はもともと災害が多い国だが、東日本大震災以降、各地で地震や台風による被害が相次ぐ。田所氏は、「災害対応は市場としては小さいものの、人の生死に関わる問題。悲しいことを減らすためには、やらなければいけない」と、研究者としての熱意を語る。

 「いわゆる3Kの現場で、人間がつらい思いをしながらやる時代は終わる。そうした仕事はロボットがどんどん肩代わりして、人間はもっとクリエイティブな仕事に集中できるようになる」と、田所氏は見る。WRSの来場者に対しては、「未来のプラントや災害の現場で、どのようにロボットが導入されるか。肌で感じて欲しい」(同氏)と期待を述べた。

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