新スピリッツ・リキュール工房では、原料投入の自動化に取り組んだ。
まず、工房の1〜5階を貫く形で原料の格納と搬送を行う自動倉庫を導入した。5階に運ばれた原料はロボットエリアでAGVやロボットで自動的に原料の移し替えなどを行い、下の階の浸漬/蒸溜エリアに移送。浸漬タンクから蒸溜釜、溜液タンクと送られ、溜液をつくり出す。
ここでは浸漬別段取りにより蒸溜回数を増やすことに成功した。大阪工場の場合、従来は原料の浸漬と蒸溜を同じ釜で行っていたため、浸漬している間は蒸溜できなかった。新スピリッツ・リキュール工房では、浸漬と蒸溜の場所を分けることで、釜の数自体は以前のまま生産能力を高めることに成功した。
また、生産量が増え続けると現場作業にかかる時間が増え、美味品質追求に十分な時間が割けなくなるという課題があった。今後も生産量が拡大するにつれて、従業員の負担がさらに増えることも予想された。そこで長時間に及ぶ現場作業の負荷を軽減し、かつ美味品質追求のための開発者との連携を深めることなどを目指して、負荷の大きい原料ハンドリング作業の自動化技術の開発に着手した。
これは全社視点で目指しているものづくりの姿ともつながっている。「お客さまの喜び・幸せへの貢献」「従業員の成長・働きがい向上」のためには、ロボティクス技術、プロセス/包装技術、データ活用技術などが必要と同社では考えており、原料投入の自動化はその一つであるロボティクス技術に関連した活動となっている。
原料ハンドリング技術開発には、画像から原料の種類を判定して開梱することで、ティーチングの工数を減らす「ロボットによる自動判断」、人の五感が担っていた検査をAIやセンシング技術で代替する「品質保証の仕組みの深化」、自動化設備から生まれたデータを収集、シミュレーションなどに活用する「デジタルツインの実現」、さまざまなロボット技術を組み合わせる「自動搬送技術との連携」という4つのポイントがあった。
原料には、クラフト袋、バケツ、段ボールなどの梱包形態やサイズの違いや重量で生まれたゆがみなどが存在する上、冷凍された原料も運ばれてくる。それらの個体差をカメラで撮影した点群データなどから読み取り、形状に合わせてカットし、開梱することが可能になった。ハンドを自動で交換することで、それらを同じロボットで行っている。
当初はそれぞれの梱包形態に合わせた専用設備を入れることも検討したが、そのための専用スペースが必要となるため、今回は同一設備でさまざまな容器も扱えるというところがチャレンジポイントとなっている。
移し替えられた原料は、計量検査のロボットステーションに移動する。そこで取り組まれたのが品質保証の深化だ。AIカメラによる異物や色などの外観検査や、揮発物質をセンシングすることで腐敗検査を行う仕組みを備えている。
これらの取り組みを通して、人の原料取り扱い時間は3分の1まで圧縮され、年間約2000時間を創出。人はその分、中味のつくり込みに集中することができるようになり、自動化によりつくり出された時間で付加価値を生み出している。「現場技術者の五感と中味開発者の技術をプロセスデータや官能評価を使い、それらを共通言語としてコミュニケーションをとる時間ができ、さらなる美味品質追求につながった」(高橋氏)。
今回、これだけのロボット設備を投入したのは同社としても初めてだったことから、今後、設備理解をさらに深めて、安定的に稼働させることを目指している。また、自動化技術を適用できる原料の拡大などにも取り組む方針だ。
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