壊れるとしたらツールなので、ツールが疲労破断するかどうかを予測する必要があります。図14にツールの疲労破断評価法を示します。応力集中箇所からき裂が進展するので、危なそうなところの第一主応力を評価しました。
有限要素法は応力集中部の応力を求めるのが得意なのですが、応力集中部の最大応力をクソ真面目に求める必要はありません。図15は、連載第7回で紹介した応力集中係数αと切欠係数βの関係です。応力集中係数αがどれだけ大きくなっても、切欠係数βは頭打ちになります。
図14の応力観測点とY座標値との関係を図16に示します。切欠係数βの定義は式1でした。
この定義から、「部材の疲労限度」は応力集中成分を含まない公称応力となります。βは焼き入れ鋼なので4[-]でいいでしょう。
CAE解析ソフトから公称応力がそのまま出てくるわけではありませんね。そこで、すみ肉溶接止端部の疲労強度評価で使われているホットスポット応力(参考文献[2])を、公称応力の代用としました。
図16に示すように、応力集中の影響を受けない部分の第一主応力を直線でカーブフィットし、最も応力が大きくなるであろうR部の位置の応力を推定します。これがホットスポット応力です。
式1を用いて、切欠などで応力集中が発生している部材の疲労限度を求め、これとホットスポット応力を比較します。マージンが2[-]以上あれば、疲労破断しないと判断できます。
ここでマージンを「安全率」と言ってもいいのですが、安全率の定義はいろいろあります(例えば「引張強さ÷単純計算した応力」などです)。そのため、ここでは「マージン」と表現しました。
前述した方法を記載した文献は、筆者が調べた限りありません。しかし、今回問題を起こした4台の後継機の開発で、この方法を用いてツールを設計したところ、一発設計で疲労破断しなかったので、そこそこ信頼できる方法だと考えています。
今回は読者の皆さんにとって少々退屈だったかもしれません。しかし、下記のような内容が含まれておりますので、何かのお役に立てればと思い執筆しました。
えっ〜と、次は疲労破断対策の失敗事例の2例ですね。溶接と焼き入れの話をします。 (次回へ続く)
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
メカトロ機器を素早く動かしたい! LMガイドの剛性をCAEでどう再現する?
メカトロ機器を素早く動かしたい! LMガイドのレイアウトで変わる機械剛性
ストップ! 外注丸投げ――CAE解析や冷却系の設計を自分でやれるようになろう
連載「CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる」の内容と有限要素法
解析専任者に連絡する前に、設計者がやるべきこと
設計者なら一度はやってみたい形状最適化、お金をかけずにどこまでできる?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
メカ設計の記事ランキング