MONOist キナクシスは長年、サプライチェーンの計画(プランニング)領域をけん引してきました。しかし直近のイベントでは「計画だけでは不十分だ(Planning is not enough)」というメッセージを発信しています。この真意について教えてください。
ガウラヴ氏 計画立案が企業にとって極めて重要な基盤であるという事実そのものは変わらない。しかし、現在のビジネス環境を観察していると、どれほど精緻な計画を立てたとしても、それを現場の運用で実行し、最終的なビジネスの成果に結び付けるまでの間には大きなギャップが存在している。つまり、計画を作成しただけで業務が終わるわけではなく、激しい環境変化の中で結果を出し続けるには、もはや計画だけでは不十分な状況になっているということだ。
MONOist 現場での実行と成果に結び付けるためには、企業はどのようなアプローチをとるべきなのでしょうか。
ガウラヴ氏 計画から業務の実行、運用までを一貫してつなぐ「オペレーショナル・オーケストレーション」へと進化していく必要があると考えている。この枠組みの中では、計画はあくまでオーケストレーションを実現するための一要素として位置付けられる。
これらを一貫して連動させるためには、最新のデータアーキテクチャやAIエージェントといった技術を活用し、策定した計画を実際の運用プロセスへと的確に落とし込んで実行することが求められる。計画と実行を切り離さずに機能させることで、企業は初めて環境変化に対する俊敏性を獲得し、サプライチェーン全体を通じた成果を創出できるようになる。
MONOist 近年はさまざまなAI技術が普及しています。サプライチェーンに特化したAIソリューションと、一般的な汎用AIではどのような違いがあるのでしょうか。
ガウラヴ氏 最大の違いは、顧客の物理的なサプライチェーンをデジタルモデルとして構築し、その構造や相互依存関係、さまざまな制約といった「サプライチェーン・フィジックス(物理学)」をAIが深く理解できるようにしている点にある。汎用AIは広範な知識や言語処理には優れているが、サプライチェーン固有の複雑な制約や連動性を正確に捉えることは難しい。物理的なサプライチェーンがどのように機能しているのかという文脈や前提条件を持たせることで、初めてAIやエージェントが的確でスマートな意思決定を支援できるようになる。
当社は創業当初から、予測的AIや処方箋的AI、機械学習や最適化の技術をサプライチェーンの計画や意思決定に活用してきた。現在では、長年培ってきたこれらの技術基盤に生成AIやエージェントAIを統合し、プラットフォームに組み込んでいる。これにより、顧客はよりスマートな意思決定やプロセスの自動化を推進し、新たな成果を生み出せるようになっている。
例えば、当社の「Kinaxis Maestro」は、サプライチェーン全体の情報を一元化し、リアルタイムな需要と供給の計画立案を可能にしている。データが更新されるたびに制約条件を考慮して自動で再計算を行い、問題発生時にのみ対応を促す例外処理ベースの運用を実現する。また、専用のエージェントAIが、予想外の需要増に対して「入荷を早めてシフトを増やし、委託倉庫を活用する」といった具体的な対処法を自社のKPIに基づいて提案するなど、複数シナリオの比較から最適な意思決定の実行までを一貫してサポートしている。
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