近年、日本の製造業を取り巻く環境は急速に変化しており、技術流出対策がかつてないほど重大な経営課題として浮上している。そこで本稿では、会計監査で培ったリスクや内部統制のナレッジを生かして、企業のコンプライアンスやガバナンス、内部監査/統制、リスク管理などに関するアドバイスを行っているPwC Japan有限責任監査法人のアドバイザーに、製造業が直面する技術流出リスクの実態や、企業が取り組むべき具体的な対策などについて話を聞いた。
近年、日本の製造業を取り巻く環境は急速に変化しており、技術流出対策がかつてないほど重大な経営課題として浮上している。従来は個別の情報管理問題として捉えられがちであった営業秘密や技術情報の保全は、現代では企業の存続や国際競争力に関わる重要なテーマとなっている。この背景には、世界的な地政学リスクや経済安全保障の重要性が高まっていることが挙げられる。
そこで、PwC Japan有限責任監査法人 米国公認会計士(ワシントン州) 情報処理安全確保支援士/公認情報システム監査人 ガバナンス・リスク・コンプライアンス・アドバイザリー部 ディレクターの雨宮弦太氏と同部 公認内部監査人(CIA)の西田昂生氏に、製造業が直面する技術流出リスクの実態と、国や法規制の最新動向、そして企業が取り組むべき具体的な対策について話を聞いた。
PwC Japan有限責任監査法人のガバナンス・リスク・コンプライアンス・アドバイザリー部は会計監査で培ったリスクや内部統制のナレッジを生かして、企業のコンプライアンスやガバナンス、内部監査/統制、リスク管理などに関するアドバイスを行っている部署だ。同部署では近年の経済安全保障の観点から新たに技術流出対策サービスを立ち上げ、事業を広げようとしている。
技術流出対策が経営の大きな関心事になっている理由として、「地政学・経済安全保障リスク」「サイバーセキュリティのリスク」「人材流動化・働き方変化に伴うリスク」が高まっていることが挙げられる。
地政学・経済安全保障リスクの側面では、大国間での技術覇権競争が激化しており、国家主導で他国企業の技術を獲得する動きが加速している。サイバーセキュリティのリスクの側面では、ランサムウェア攻撃や生成AI(人工知能)を悪用した攻撃手法が進化しており、海外子会社やサプライチェーンの弱点を突くサイバー攻撃事例が相次いでいる。人材流動化・働き方変化に伴うリスクの側面では、SNSを通じた海外機関からの接触や中途採用/転職の活発化、海外人材の活用拡大に伴い、退職者/派遣社員/役員などを介した意図的あるいは不注意による情報流出リスクが高まっている。
こうした背景を受け、政府や関係省庁による法整備やガイドラインの策定も急速に進んでいる。雨宮氏は「われわれが注目しているのは、2025年5月に経済産業省から提示された『技術流出対策ガイダンス』である。このガイドラインでは、技術流出の主要な経路や企業が講じるべき予防策が具体的に示されている。2026年4月には実態の変化を反映した第2版が出ている」と説明する。
情報処理推進機構(IPA)が実施した2024年の実態調査によると、流出しやすい営業秘密の筆頭には「製造に関するノウハウ、成分表等」が挙げられており、次いで「顧客情報」や「生産プロセスの工程データ」が続いている。また、情報流出の引き金となった要因としては、サイバー攻撃などの外部要因に加え、社内ルールの不徹底による誤操作や不注意、あるいは不満を抱いた内部関係者による不正な情報持ち出しが大きな割合を占めている。
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