AIと協調する「スーパーヒューマン」を目指せ――キナクシスCEOが語るSCM変革の鍵:製造マネジメント インタビュー(3/3 ページ)

» 2026年10月09日 06時00分 公開
[安藤照乃,MONOist]
前のページへ 1|2|3       

従来の10倍の業務をこなす「スーパーヒューマン」になるために

ガウラヴ氏 ガウラヴ氏

MONOist AIが高度化するにつれて、人間の役割についても再定義が求められつつあります。今後、人間はAIとどのように協調していくべきだと考えていますか。

ガウラヴ氏 システムとしてAIを導入しただけで、自動的に良い成果が得られるわけではない。人間は、そもそも解決すべき課題は何か、どのような成果を達成したいのかという第一原理に集中することが求められる。その上で、人間の役割はどこまでか、AIエージェントには何を任せるのか、そして両者がどのように連携していくかというガバナンスを明確にすることが重要になる。

 これまで、複雑な業務の知識やノウハウの多くは個人の頭の中にしかなかった。しかしこれからは、AIエージェントがそのノウハウを学習することで、知識が個人にとどまらず「組織知」へと転換していくようになる。その結果、人間はAIの支援を受けながら、従来の5倍から10倍の業務をこなし、より深いインサイトを創出できる「スーパーヒューマン」へと進化することが可能になると考えている。

 特に深刻な人手不足が課題となっている日本企業にとっては、単なる労働力としての頭数に制約されることなく、非線形な形で事業をスケールさせていく道が開けるはずだ。

MONOist キナクシスにとって日本市場はどのような位置付けでしょうか。

ガウラヴ氏 日本市場ではすでに自動車やハイテク、ライフサイエンス、化学などの業界で40社以上の顧客とビジネスを展開しており、われわれは強気な見通しを持っている。今後もパートナーエコシステムの強化を含め、継続的な投資を行っていく方針だ。

 また、業界全体を見渡すとAIエージェントの活用はまだ初期の段階にとどまっている。そこで当社は新たに「FDE(Forward Deployed Engineers)」という専門部隊を立ち上げた。FDEは、顧客が抱える課題や目指す成果を直接理解した上で、当社のプラットフォームの機能群を組み合わせて最適なソリューションを設計、構築するための組織だ。データエンジニアリングやデータサイエンス、プロセスアーキテクチャといった専門技能を持つメンバーの混成チームで構成されており、彼らが顧客の現場に伴走しながら、ソリューションの実装を強力に支援していく。

MONOist 日本の製造業が直面している課題と、その中でサプライチェーンの変革を目指すリーダーたちに向けて、メッセージはありますか。

ガウラヴ氏 日本の製造業は現在、コストの上昇や金利の引き上げ、そして深刻な人材不足といった新たな課題への対応に迫られている。もちろん、日本の製造業が伝統的に培ってきた総合的品質管理(TQM)や「カイゼン(改善)」といった強みは今後も維持していくべきだ。

 しかし同時に、新しい技術がもたらす、“新しい働き方”を受け入れるマインドセットへの変革も求められている。ビジネス環境の変化のペースが加速する現代においては、変化のシグナルを素早く捉えて判断を下す「意思決定スピード」の向上が不可欠になっている。外部の環境変化と自社の意思決定の間に遅れが生じれば、たちまち競争上の不利益を被ることになるからだ。

 そのためには、データ基盤やAIといった意思決定インテリジェンスへの投資を行い、アジャイルなアプローチを取り入れることが重要になる。まずは質の高い計画を立案することが大前提だ。悪い計画からは決して良いオーケストレーションは生まれない。その優れた計画を出発点とした上で、変化が起きた際にはフィードバックループや学習サイクルをシステムに組み込み、機敏に運用していく姿勢こそが、今後の競争力を左右する鍵になるはずだ。

⇒その他の「製造マネジメント インタビュー」の記事はこちら

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
Special SitePR
あなたにおすすめの記事PR