防汚と防曇を両立した吸水型防曇樹脂、モスアイ構造で低反射も実現:材料技術

デクセリアルズは、防曇と防汚を両立した「吸水型防曇樹脂」を開発した。多量の水蒸気にも耐え、汚れもはじく画期的なメカニズムや、モスアイ構造を組み合わせて透過率を高めた技術とは?

» 2026年10月07日 06時30分 公開
[遠藤和宏,MONOist]

 デクセリアルズは、「第18回 高機能素材 Week −Highly-Functional Material Week−」(会期:2026年9月30日〜10月2日、会場:幕張メッセ)内の「第2回 高機能マテリアル展」に出展し、開発品として、「吸水型防曇樹脂」や「低反射+防曇樹脂」を紹介した。

インクジェット印刷で部分的に材料を塗布可能

 一般的な防曇技術は「親水タイプ」と「吸水タイプ」の2種類に大別される。親水タイプは、材料表面に薄い水膜を形成して水滴を付着させないようにすることで、光の乱反射を防ぎ、曇り特有の白っぽさを抑えるメカニズムを持っている。

 一方で、吸水タイプの防曇技術は、材料そのものが水蒸気を吸水することによって、表面における結露の発生を物理的に防ぐ。多量の蒸気に対しても吸水して表面に水膜を形成できるため、恒久的に曇らない状態を保てる。

 しかし、水分の供給量が少なすぎる場合、表面に形成される水膜が不均一で半端な状態になる。この状態だと、表面が白く曇ることはないものの、不均一な水滴や水膜が光を屈折させてしまい、面がゆがんで見える「レンズ効果」が発生し、結果として視認性が低下してしまう。

 また、表面が水にぬれやすく設計されているため、汚れも同時に吸着しやすいという課題もある。表面に汚れが吸着してこびりつくと、その汚れの層の上が結露して曇ってしまい、本来の防曇機能が失われてしまうという問題も存在する。

 そこで同社は吸水型防曇樹脂を開発した。同材料は、基材に塗布すると、表面の「撥水層」と内部の「吸水層」という2層に分離する独自のメカニズムを備えている。

「吸水型防曇樹脂」の概要 「吸水型防曇樹脂」の概要[クリックで拡大] 出所:デクセリアルズ

 デクセリアルズの説明員は「この構造により、気体である水蒸気のみが表面の撥水層を通り抜けて内部の吸水層に吸収されるため、優れた防曇効果を発揮できる。撥水層は液体である水滴や油分などの汚れを物理的に強固に弾き返す」と説明した。

吸水型防曇樹脂の物性 吸水型防曇樹脂の物性[クリックで拡大] 出所:デクセリアルズ

 同材料を応用し、同社は低反射機能を付加した低反射+防曇樹脂を開発した。

 通常の防曇樹脂に対して低反射機能を搭載する場合、その上に低反射の膜をコーティングする必要がある。しかし、その上に別の膜を搭載すると、それが「蓋」の役割を果たし、水蒸気が内部の吸水層に到達できなくなるため、結果として防曇機能が失われてしまうという問題があった。

 そこで同社は、微細な凹凸形状によって光の反射を防ぐ「モスアイフィルム」の技術と防曇樹脂を組み合わせて、低反射+防曇樹脂を開発した。同材料は、保護フィルム、モスアイ構造の反射防止層、TACフィルム、粘着層、剥離フィルムで構成される。

「低反射+防曇樹脂」の概要 「低反射+防曇樹脂」の概要[クリックで拡大] 出所:デクセリアルズ

 同材料の設計が精緻に行われているため、インクジェット印刷で部分的に塗布可能だ。これにより、材料がコートされている部分は曇らず、コートされていない部分だけが曇るという性質を利用し、結露した際に文字やロゴなどの意図したデザインが浮かび上がるような意匠性を付与できる。

 同材料は、車載カメラや自動センサー、ディスプレイ、パッケージなど幅広い分野への応用が期待されている。

穴が開いているように見える部分が低反射+防曇樹脂 穴が開いているように見える部分が低反射+防曇樹脂[クリックで拡大]
インクジェット印刷で部分的に低反射+防曇樹脂を塗布したモノ インクジェット印刷で部分的に低反射+防曇樹脂を塗布したモノ[クリックで拡大]

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