では、この小さな水鉄砲はどうやって「水を吸い上げ」「勢いよく飛ばす」のでしょうか。その正体は、メカニカルな「シリンダーポンプ」と「2つの逆止弁(1方向弁)」の組み合わせです。
それでは動作プロセスを見ていきましょう。
タンク後部のキャップを開けて水を注ぐと、水は本体内部にたまります。最初はシリンダー内部やチューブに空気が残っていることもありますが、ピストンを何度か押して、吸入口から水を吸い上げると、これらの部分にも水が満たされていきます。
ピストンを指で押すと、その先端がシリンダーの奥へ進みます。シリンダー内の容積が急激に小さくなり、内部の水圧が高まります。すると、2つの逆止弁が水圧を受け、それぞれ次のように動きます。
押し出された水は細いノズル穴から、勢いよく前方へピュッと射出されます。
ピストンから指を離すと、内蔵されたスプリングの力でピストンが元の位置へ戻ります。このときシリンダー内の容積が大きくなり、内部が負圧(周囲より圧力が低い状態)になります。すると、圧力差によって2つの逆止弁は射出時とは逆に動くのです。
吸入弁が開くことでタンク内の水がシリンダー内へ吸い込まれ、次の射出の準備が整います。
このように、ピストンを押して離す動作と2つの弁の交互開閉によって、操作を繰り返すたびに水を発射できる仕組みです。
今回の分解で注目すべきは、「ネジが一切使われておらず、左右のボディーががっちりと接合されている」点です。ネジ留めではなく接合を選択する理由としては、以下のことが考えられます。
ネジを使う場合、ネジ本体の部品代に加え、ボス(ネジを受ける柱)の設計や、電動ドライバーなどでの締結工程(工数)が必要です。溶着(超音波溶着など)または接着剤で固定すれば、ネジや締結工程を省けるため、部品代と組み立て工数の削減につながります。
前述の通り、この製品は「本体=タンク」です。ネジ留めだけでは合わせ目から水が漏れてしまうため、ゴムパッキンなどを全周に挟む必要があります。左右の合わせ目を直接溶着/接着して“面で密着”させることで、本体の合わせ目に全周パッキンを使わずに水漏れを防ぐ構造を実現しています。
子どものころに誰もが一度は遊んだことのあるプラスチックの水鉄砲。一見すると単なる安価なおもちゃですが、あらためて構造を観察してみると、その内部には「ピストンによる流体制御」と「組み立て工数を極限まで削ぎ落とす製造設計」が見事に融合していることが分かります。
安く作るためにどこを共通化し、どう組み立てるか――。100円均一ショップに並ぶ製品には、設計者や製造現場の知恵が今も詰まっています。ぜひ、手元にあるクリアパーツのおもちゃをじっくりと眺めて、その中に隠された“仕組み”を感じてみてください! (次回へ続く)
落合 孝明(おちあい たかあき)
1973年生まれ。株式会社モールドテック 代表取締役(2代目)。『作りたい』を『作れる』にする設計屋としてデザインと設計を軸に、アイデアや現品に基づくデータ製作から製造手配まで、製品開発全体のディレクションを行っている。文房具好きが高じて立ち上げた町工場参加型プロダクトブランド『factionery』では「第27回 日本文具大賞 機能部門 優秀賞」を受賞している。
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