なぜ鶏肉を次工程に手渡しすると歩留まりが上がるのか 元トヨタ生技の改善4選:元トヨタ生技が見た食品工場のなぜ(4)(2/3 ページ)

» 2026年09月29日 07時15分 公開

4つの現場改善事例、その見方

 これから4つの現場を紹介するが、読み方を1つだけお願いしたい。具体的な手法に着目しないでほしい。

 自社だったら何が取り入れられるか、という視点で読んでほしい。手法そのものではなく、その裏に隠れている思想を見てほしいのだ。

事例1:鶏肉の加工――「作ったら手渡し」

 唐揚げ用の鶏肉をぶつ切りにし、粉を付け、トンネルフリーザーで冷凍する工程である。ぶつ切りは6人の女性で行い、粉付けとフリーザー投入は男性1人が担当していた。

 鶏肉を加工するスピードの方が、鶏肉に粉を付け、フリーザーに投入するより速い。その結果、フリーザーの手前に1〜2時間分の仕掛品が滞留していた。

 ここで起きていたことは、単なる仕掛品の山ではない。滞留すれば異物混入の恐れがある。鶏肉だからドリップ(肉の水分)が出て、歩留まりが悪化し、揚げた後のジューシー感も落ちる。保管するための番重が何枚も必要になり、その洗浄と管理のコストがかかる。

 さらに、粉と混ぜる段階でしっかり切れていない鶏肉が見つかっても、誰がいつ切ったものか分からない。つまり、直せないのだ。

 そこで、やり方を1つだけ変えた。ボウル1杯分の加工を終えたら、そのまま次工程までボウルを運んでもらうようにしたのである。

「作ったら手渡し」。自ら次の工程までボウルを運ぶことで歩留まりが向上 「作ったら手渡し」。自ら次の工程までボウルを運ぶことで歩留まりが向上[クリックで拡大]

 すると当然、後工程が詰まる。手が止まる人が出てくる。そこで作業が早かった2人を配置転換し、新製品の生産に回ってもらった。

 滞留していた仕掛品がなくなったので、使用する番重はゼロになった。切ったそばから冷凍されるので、歩留まりが改善し、ジューシー感も向上した。

 キーワードは「作ったら手渡し」である。

事例2:魚のパック詰め――「コンベヤーに隠れる手待ち」

 スーパー向けに魚をパック詰めする、2人作業の工程である。まず1人が魚を2匹取り出してトレーに乗せ、コンベヤーに流す。ラップ機と金属探知機を通って出てきたものを、もう1人が番重に詰める。

 課題は、2人目が毎回1〜2秒、魚が出てくるのを待っていたことだ。全体としては何の問題もなく見える。しかしそこには、確実に人を抜ける余地があった。

 対策として、コンベヤーの出口に5パック分をためられるローラーコンベヤーを設置した。

 作業者は5パック分を投入したら、自ら歩いて出口へ回り、金属探知機から出てきた5パックを自ら番重へ入れる。2人でやっていた仕事が、1人で回るようになった。食品を扱うので魚は右手、トレーは左手で扱うよう作業も整えた。

「コンベヤーに隠れる手待ち」。1〜2秒の待ち時間に目を向けて1人作業へ 「コンベヤーに隠れる手待ち」。1〜2秒の待ち時間に目を向けて1人作業へ[クリックで拡大]

 浮いた1人は、リーダー職として他職場の改善活動に従事している。

 キーワードは「コンベヤーに隠れる手待ち」である。1〜2秒は目に見えない。しかし、それが1日分積み上がれば、1人分になる。

事例3:弁当詰め――「広げるより、区切る」

 5人の作業者が調理と弁当詰めを分担していた。具材の調理が終わるとお弁当の空き容器を机いっぱいに広げ、1品ずつ順番に詰めていく方式である。

「広げるより、区切る」で、弁当の具材詰めを効率化 「広げるより、区切る」で、弁当の具材詰めを効率化

 ここで、今後弁当の取扱量が1.5倍に増える見込みのため、机も1.5倍に拡張しようという計画が持ち上がった。調理室全体のレイアウトを変える、大掛かりな工事である。

 私が提案したのは、机をさらに広げることではなかった。作業方法の見直しである。15食を1単位とし、15食分の全品を詰めてから蓋をする、という形に変えた。

 結果はどうなったか。

 まず、レイアウトを変える工事が不要になった。次に、一気に広げて詰めるのではなく目の届く範囲で作業が収まるので、具材の入れ忘れのクレームがゼロになった。異物混入のリスクも下がる。そして15食ずつの繰り返し作業になるので、回を追うごとに作業が改善されていき、生産性は20%上がった。作業は繰り返すことでムダが取れてくるのだ。

 机を広げていたら、この20%は生まれていない。キーワードは「まとめるより、分ける」である。

事例4:納豆づくり――「工場全体で扱う単位をそろえる」

 蒸煮(豆を蒸す)、パック詰め、発酵、包装の順で生産する、20人程度の納豆工場である。

 課題は、前半と後半の工程の連携が悪いことだった。蒸す工程では効率を考えて一度にまとめて蒸し、包装工程では必要な分だけを包装する。作業するフロアも違うため、工程の間には数時間分の仕掛品が停滞していた。保管場所を確保し、包装に必要なものを探す。そのために余分な管理が発生していた。

 それぞれの工程は、自分たちのやり方で効率よく仕事をしている。だからこそ、工場全体の流れが詰まっていた。

 対策は、工場内で扱う単位をそろえることだった。従来は一度に蒸す量が約5000パック、工程間の運搬は48パック、出荷は36パックと、単位がばらばらだった。そこで、出荷単位である36パックを基準に、各工程で扱う量をその倍数にそろえた。運搬も、あえて一度に運ぶ量を48パックから36パックに減らした。

 一度に運ぶ量を減らすのは、非効率に見えるかもしれない。しかし、単位をそろえたことで各工程の作業のタイミングを合わせやすくなった。仕掛品の管理にかかる手間が減り、管理者はその時間を改善活動に充てられるようになっている。

 キーワードは、「工場全体で扱う単位をそろえる」ことだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
Special SitePR
あなたにおすすめの記事PR