設計プロセスで完璧に製品の品質を確認できない理由製品リコールを生む品質不良の原因と対策(5)(1/2 ページ)

設計品質と量産品質の構造を整理し、品質不良が生まれるメカニズムを体系的に考察する連載「製品リコールを生む品質不良の原因と対策」。第5回では、設計プロセスにおける審査や試験/測定の役割を整理した上で、それでも製品品質を完璧には確認できない理由を、品質基準書と品質システムの観点から解説する。

» 2026年07月07日 07時00分 公開

 前々回前回の連載で、完璧な「設計」をするためには多くの課題があることを説明した。それが分かっているからこそ、設計が完了した後に、その設計の出来具合を確認する「審査」と「試験/測定」を行うのだ。

設計プロセスの審査と試験/測定 図1 設計プロセスの審査と試験/測定[クリックで拡大]

 審査と試験/測定では、機能性を考えて作成した設計データが、設計品質に配慮したものになっているかを確認する。製品の設計は、企画書や仕様書に記載されている製品仕様にのっとって行われる。

 ただし、単に機能性だけを考えて設計すればよいわけではない。市場で販売する製品にするには、ユーザーに危害を加えないかという安全性や、壊れにくいかという信頼性など、設計品質にも配慮しなければならないのだ。ここに、展示会などで披露する開発品の設計との大きな違いがある。

機能性を考えて作成した設計データが、設計品質に配慮しているかを確認する 図2 機能性を考えて作成した設計データが、設計品質に配慮しているかを確認する[クリックで拡大]

 設計が完了すると、CADデータや部品表(BOM)、既製部品の仕様書などの設計データが、設計品質に配慮したものになっているかを確認する。試作セットの部品を発注する前には、設計データのみで確認する審査を実施し、試作セットができた後には、動作/試験/測定して確認を行う。

 ただし、製造性の確認は、試作セットを組み立てながら実施する。機能性の確認は、試作セットを動作させたり、測定したりして行う。安全性と信頼性の確認は、試験/測定によって実施する。

設計品質の安全性と信頼性は、審査と試験/測定で確認する 図3 設計品質の安全性と信頼性は、審査と試験/測定で確認する[クリックで拡大]

 このように、設計プロセスでは審査と試験/測定によって設計品質を十分に確認する。しかし、現実には不良品は発生してしまう。その原因として、主に下記の2つが挙げられる。

  • 品質基準書の不備
  • 品質システムの不備
設計プロセスで、完璧に製品の品質を確認できない理由と対策 表1 設計プロセスで、完璧に製品の品質を確認できない理由と対策[クリックで拡大]

 これらの原因は、前回の連載の中(製品メーカーの品質レベルが低い理由:品質基準/システムが未成熟)で述べた通り、製品メーカーの設計経験が足りていないことも一因となっている。だが、たとえしっかりした品質基準書があり、それを運用する品質システムがあったとしても、不良品は発生する。その理由を、以下で解説する。

そもそも品質基準書がない

 多くの製品を設計し、市場で販売した経験があるにもかかわらず、品質基準書のない製品メーカーはある。過去の設計データを参考にして、新しい製品を設計しているのだ。

 実績のある過去の製品の設計データを参考にしているので、問題はないだろうと考えてしまいそうだ。しかし、品質基準書がない状態では、次のような問題が発生する恐れがある。

部品メーカーが変わると品質レベルが変わる

 例えば、板金部品の2D図面に溶接強度が記載されていないとする。この部品の設計者は、品質基準書がないため、適切な溶接強度が分からず、2D図面に溶接強度を記載しないまま部品メーカーに一任している場合があるのだ。「溶接強度は(部品メーカーに)一任」とあえて記載していることもある。

 実は、2D図面などのCADデータには、部品作製に必要な全ての値が記載されているとは限らない。しかし、板金部品を過去の類似部品と同じ部品メーカーに発注すれば、部品メーカーは過去の部品と同じ溶接強度にしてくれることがある。長年の付き合いがある部品メーカーとは「あうんの呼吸」があるからだ。

 ここで、溶接強度が記載されていない2D図面の部品を、日本の部品メーカーから中国の部品メーカーに製造移管したとする。中国の部品メーカーとの間には「あうんの呼吸」がないため、中国の部品メーカーは独自の判断で溶接強度を決めてしまう。中国を含む海外で部品を作製する場合、コミュニケーションが難しく、問い合わせが十分に行われないこともあるので、このような問題は起こりやすい。

 これらの事態を未然に防止するために、品質基準書は重要なのだ。

設計者によって品質レベルが変わる

 製品メーカーの品質レベルは継続的に一定に保たれる必要がある。これは、ISO 9001(品質マネジメントシステム)の概念の一つでもあり、ユーザーが特定の製品メーカーの製品を品質面で安心して購入するためには重要なことだ。しかし、品質基準書がなく、設計者個々の判断によって前述の溶接強度がさまざまに変わってしまえば、品質レベルは一定にならず、ユーザーは安心して製品を購入できなくなってしまう。そのような事態に陥らないためにも品質基準書は重要だ。

記載内容が汎用的→試験/測定方法が一定にならない

 品質基準書は、一般的に汎用(はんよう)的に書かれている。その製品メーカーで設計されるあらゆる製品に適用できる記載にする必要があるからだ。しかし、例えば「側面の通気孔は○○のこと」という記載があった場合、円筒形の製品ではどの面が側面であるか判断しにくい。

 このような場合は、品質基準書の汎用的な記述に追加して、「円筒形の製品の場合は、底面/天面以外を側面とする」などの記載を追加すればよい。

 もしくは、企画書が発行された後に設計者が作成する仕様書で、「側面=底面/天面以外」と定義してもよい。試験/測定レポートで「側面=底面/天面以外」と記載し、その内容を確認してもらう方法もある。

 大切なのは、試験/測定の内容が製品メーカー内で正式に確認されており、それが資料として保管され、後に新しい製品を設計する人がその資料を見て、同じ方法で試験/測定を実施できる品質システムが整っていることだ。これであれば、製品メーカーの品質レベルは一定であるといえる。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
Special SitePR
あなたにおすすめの記事PR