実際のCR開発の推移を時系列で図5に示す。時間を追って、その詳細を以下に記す。
1997年に受注し、すぐに作業に取り掛かった。社内では事業部が窓口となり、研究所は技術開発全般を受け持った。このために20人程度のプロジェクトチームを作り、著者が実施責任者を務めた。
1年ほどで基本設計をまとめ、1999年に事業部を含めたデザインレビュー(DR)を行った。
基本設計承認後、フルスケールの地上試験装置の設計、製作、試験を行った。ただし、地上では重力の影響を受けるため、重力補償用の地上支援装置(GSE:Ground Support Equipment)を製作し、平面内の動きだけは極力宇宙環境に近づけた。このために、地上試験装置の結果から宇宙環境での動きを予測するシナリオ(図6)を考えた。
すなわち、地上試験装置に対応する解析モデルを作成し、解析結果を試験結果と比較して、その妥当性を十分に確認した後、地上解析モデルから重力補償用のGSEを削除し、これを宇宙環境モデルとした。そして、このモデルを使用して宇宙環境での性能を予測することにした。
図6の予測シナリオに対して、NASAは当初、難色を示したが、その詳細を説明することにより、何とか納得を得られた。
図7に宇宙環境モデルを示す。解析は機構解析ソフトウェア「ADAMS」をベースに、さまざまなソフトウェアを使用した。回転機能など、通常版にはない機能は、ソフトウェアベンダーと一体になって新規開発した。
地上試験装置を図8に示す。この下部に見えるのが重力補償用のGSEであり、試験装置全体をエアベアリング3セットで浮かせて重力を補償し、装置全体を面内で自由に動かすことができる。
設計は以上のように順調に進み、2000年にNASAとの最初のDRに臨むこととなった。
DRでは、専門分野ごと(システム、構造、振動、熱、騒音、電力、インテグレーション、検証)に、事前にNASAから質問が文書で提示された。これに対してT社で回答を準備し、その回答を会議で専門分野ごとに議論し、判断を下すものであった。最終判断はBoard Member(NASA/JAXAの責任者)が行う。DRにはNASAから40人ほどが参加し、会議の結果を「Word」や「Excel」でまとめる専任の技術者も同行していた。
1週間にわたるDRの結果、7項目に関してRed-Light(赤信号、要するにこのまま進めてはならないということ)がともった。このようにDRでRed-Lightが灯るのはまれなことのようであるが、結果は受け入れざるを得なかった。CRは米国のモジュールであり、厳しく指摘されたものと思う。
こちらに問題があることは認識しつつも、日本流に曖昧に何とかなるのではないかという甘い気持ちもあったようだが、米国流のSystems Engineeringの前には風前のともしびであった。以降、上記の7項目のRed-LightをYellow-Light、Blue-Lightにする努力が始まる。
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