MARS-1が生まれたきっかけは、1955年に穂坂氏が所属していた鉄道技術研究所の研究室の懇親会で軽井沢に旅行に行った際にアイデアが浮かんだからだといわれている。ジェイアール総研情報システム 代表取締役 社長の後藤浩一氏は「穂坂氏は列車の座席に座れずに立って眺めていた座席の乗客の頭がビットに見えたことにより、座席予約をコンピュータ内で処理することを思い付いたといわれている」と述べる。
翌年の1956年に自動制御研究室が発足し、国鉄本社の電気局通信課の人間と協力して座席予約システムの提案を始めた。当時の国産のコンピュータでは不十分な部分もあり、1957年に米国の真空管式コンピュータ「Bendix G-15」を導入し、大野氏を筆頭に同コンピュータを活用してMARS-1の開発に着手したという。その後、鉄道技術研究所の案に基づいて、日立製作所の戸塚工場で開発が始まった。1959年に初期型が完成し、翌年の1960年1月から運用を開始している。
1964年にはプログラム内蔵方式の「MARS 101」が誕生した。収容座席が1日3万座席に拡大し、自動発券も可能となった。鉄道情報システム 上席執行役員 旅客システム部長の金子正美氏は「MARS 101の端末装置は『AB形端末』と呼ばれ、列車や駅の指定にはプラグを挿して切符を印字していた」と語る。
その後MARS 101をはじめとした「MARS 100系システム」が次々と稼働し、一般の指定席管理を支えてきた。1972年に稼働を開始した「MARS 105」は、東北新幹線等の開業に備え、量的拡大から質的変革という目的で開発された。大型汎用コンピュータを採用し、重要ファイルの二重化などの高度な冗長化機能を整備し、乗車券やホテル券販売を可能にした。同システムの最終的な収容座席は100万座席、端末台数は1650台となった。
MARS 100系のシステム以外にも、グループ/団体旅行用の指定席管理ができる「MARS 200系システム(MARS 201、MARS 202)」やプッシュフォン電話による指定席予約システムを可能にした「MARS 150」も生まれている。
1985年にはMARS 105、MARS 150、MARS 202を統合し、5台の大型汎用コンピュータを導入してシステム構成およびソフトウェア構造を刷新した「MARS 301」が稼働した。これにより、指定券や普通乗車券、定期券、特別企画乗車券、イベント券、航空券といった商品がみどりの窓口で扱えるようになった。「『指定券予約システム』から『旅客販売総合システム』へ大きく進化し、端末からは漢字名で出力されるようになった」(金子氏)。
国鉄の分割民営化後に開発された「MARS 305」は機器の老朽化などの課題解決に向けて1996年に導入され、営業施策の展開能力向上に寄与した。大型汎用コンピュータも5台から2台構成へ変更している。
その後の2004年から稼働した「MARS 501」は、JR各社の異なる施策展開に対応できるようにするため多くのサーバを導入した。コンピュータとサーバを活用したハイブリッド構成にすることで、サービス提供時間の大幅な拡大に成功している。
2020年からはネット予約や自動発券機の増加、デジタル化の流れを踏まえ、インターネット販売やインバウンド対応、予約、決済管理、情報セキュリティを強化した「MARS 505」が導入されている。
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