着想は「とろろ昆布」、水ではがせる海藻由来のバイオマス接着剤イノベーションのレシピ(1/2 ページ)

博展、we+、セメダインは海藻由来の水系接着剤「LOOPGLUE」を共同開発した。天然の粘着成分を活用し、接着力と水で容易に剥がせる易解体性を両立。資源調達費と製作人件費で15%削減を見込む。

» 2026年04月17日 06時15分 公開
[安藤照乃MONOist]

 博展、we+、セメダインの3社は2026年4月15日、海藻由来のバイオマス接着剤「LOOPGLUE(ループグルー)」を開発したと発表した。LOOPGLUEは海藻などに含まれる粘着成分を活用しており、紙や木材といった多孔質材料同士の接着が可能だ。また、水を加えることで容易に剥離できる「易解体性」も併せ持つ。

海藻由来のバイオマス接着剤「LOOPGLUE」 海藻由来のバイオマス接着剤「LOOPGLUE」[クリックで拡大]

 使用の際は接着面に薄く均一に塗布し、接着後数分から数十分程度、完全に固定されるまで静置する。表具や紙を貼り合わせる場合には、接着剤を水で3倍に希釈して使用する。一方、はがす際には、接着部分に水を含ませて数分放置すると、素地を傷めずきれいにはがすことができる。木材などの資材は剥離後もほぼ新品同様の状態で再利用が可能となる。接着と易解体性という相反する機能を、いかにして両立させたのか。3社の開発ストーリーと技術の詳細を聞いた。

海藻のネバネバが接着材に? 廃棄物が出る空間ディスプレイ事業に

従来の接着剤とLOOPGLUEの比較 従来の接着剤とLOOPGLUEの比較[クリックで拡大] 出所:博展
博展の鈴木亮介氏 博展の鈴木亮介氏

 従来の接着剤は、強度を確保するために石油由来の化学成分が多く使用されている。これらは接着強度が極めて高い反面、はがす際に跡が残ったり、展示で使用する壁面や木材を損傷してしまうという難点があった。加えて、石油由来の原料は調達の不安定化や環境負荷の観点からも課題となっている。

 空間ディスプレイ事業を展開する博展においても、使い捨てを前提としない資源循環型への移行が急務となっていた。博展 サステナビリティ推進部 部長 サーキュラーデザインルーム ルーム長の鈴木亮介氏は、「展示などは、多くの資材を使って空間を組み立ててもイベントが終われば不要となり、大量の廃棄物が出てしまう。設営の段階から部材の解体と再利用を見据えた仕組みが必要だと考えた」と語る。

空間ディスプレイで使用する資材 空間ディスプレイで使用する資材[クリックで拡大]出所:博展
we+の安藤北斗氏 we+の安藤北斗氏

 自然由来の素材について、独自の視点を持っていたのがデザインスタジオのwe+である。同社は2013年の設立以降、海藻や藻などを活用した海洋関連のプロジェクトを多く手掛けてきた。2023年9月にみなとラボと共同開催した国際海洋環境デザイン会議「OCEAN BLINDNESS」においては、海苔を用いてテーブル天板を制作するなどの企画展を実施した。

 we+の共同主宰であり武蔵野美術大学 准教授の安藤北斗氏は、「この展示設営に関わった博展との打ち上げの席で、出てきた海藻を見た時に『このネバネバを用いて、新たな接着剤を構築できないか』と議論を交わしたことが、共同プロジェクトの始まりだった」と振り返る。

自然由来100%を維持したまま接着強度を向上

 両者が着目したのが、日本における「とろろ昆布」の製法だ。とろろ昆布は、何枚もの昆布を重ねて圧縮し、薄く削りだして作られる。この加工工程において昆布同士を密着させているのは、昆布が持つ天然の粘着成分のみである。この粘性を抽出し、新たな接着剤のバインダーとして応用できないかと考えた。

開発工程で検証した海藻類 開発工程で検証した海藻類[クリックで拡大]

 開発の初期段階では、ツノマタやフノリ(紅藻類)、モズク(褐藻類)といったさまざまな海藻を煮出して粘質多糖類を抽出し、木粉などに対する接着性能の検証を繰り返した。その結果、海藻由来の成分である「アルギン酸ナトリウム」の水溶液が、バインダーとして特に優れた粘着性を示すことが判明した。

セメダインの西村香菜氏 セメダインの西村香菜氏

 しかし、アルギン酸ナトリウム単体では接着強度が不足しており、実用化には壁があった。ここでプロジェクトに合流したのが、100年以上の歴史を持つ接着剤メーカーのセメダインである。セメダイン 製品部 販促グループ 規格管理チームの西村香菜氏が「これまでも熱や電気を加えることではがせる製品は存在したが、解体されることまでを設計の前提とした接着剤は画期的なアイデアだった。せっかくセメダインにお声がけいただいたからには、接着のプロとして何とか形にしたかった」と振り返る。実際に、同社の知見が加わったことで研究は進展することとなった。

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