リサイクルリチウムの次世代生産技術、核融合発電の燃料製造に役立つワケリサイクルニュース(2/3 ページ)

» 2026年03月30日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

純度99.99%の水酸化リチウムをダイレクトに回収可能

 今回のベンチプラント実証機は、リチウムイオン電池の原料仕様を満足する高純度99.99%の水酸化リチウムをダイレクトに回収できる。さらに、前処理、回収、晶析(結晶化)までを一貫して行え、24時間365日の連続運転が可能なシステムとして構築されている。現在、1日当たり1.5kgの水酸化リチウム粉末を製造する能力を備えている。

ベンチプラントの全体フロー ベンチプラントの全体フロー[クリックで拡大] 出所:LiSTie

 この実証機は、固体である使用済みリチウムイオン電池を水溶液状態とする前処理プロセスや、高純度リチウムとして回収しリサイクルリチウムの製造を行うLiSMICユニットで構成される。

 ベンチプラント実証機の前処理プロセスは、水溶出/ろ過装置と電気透析を用いた濃縮装置から成る。なお、リチウム含有固形物の前処理技術の開発として、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けている。

 水溶出装置は、使用済みリチウムイオン電池を焙焼して得られるブラックマス中のリチウムを水溶出する。同装置は、ロッキングミキサーによりこのブラックマスと水を撹拌(かくはん)し、リチウムなど、水に溶けやすい元素を水側に移す。既に実施した実証試験では少量の水と短時間(約10分)の撹拌で目標濃度である0.2mol/Lを達成した。ろ過装置は水溶出したリチウムをろ過し、不要なものを除去する。

水溶出/ろ過装置と濃縮装置 水溶出/ろ過装置と濃縮装置[クリックで拡大] 出所:LiSTie

 濃縮装置は、電気透析装置を用いてリチウム濃度を高め、最適なpHに自動調整する。この工程により濃度を高め、最適なpHに自動調整されたリチウム原液はLiSMICユニットの原液調整タンクに補充される。

 LiSMICユニットは、原液調整タンク、回収液タンク、製品タンク、蒸発器、LiSMICセルなどで構成される。同ユニットは、+極と−極の電極の間にリチウムイオンだけを通す固体電解質膜であるセラミック膜を設置したLiSMICセルにおいて、両電極に電圧をかけることで発生する電位差を利用し、セラミック膜を通してリチウム原液からリチウムイオンだけを−極側の純水へ選択的に移動させる。

原液調整タンクが配置されたユニット 原液調整タンクが配置されたユニット[クリックで拡大]

 これにより、コバルトやニッケルなどのイオンである不純物とリチウムイオンを分離し、高純度のリチウムイオンを回収する。リチウム原液は原液調整タンクから送られ、LiSMICセルにより抽出されたリチウムイオンを含んだ純水は回収液タンクに運ばれる。

回収液タンクが配置されたユニット 回収液タンクが配置されたユニット[クリックで拡大]

 これらのプロセスを繰り返し行うことで、回収液タンク内の純水のリチウムイオン濃度を高める。リチウムイオン濃度が限界濃度である約4mol/Lに達した段階でこの純水を製品タンクへ移す。その後、蒸発器を用いた晶析工程により水分を飛ばし、高純度水酸化リチウムの粉末を完成させる。

 星野氏は「連続運転の最大の課題は、原液調整タンクのリチウム原液が減ると回収速度が落ちることだ。今回の実証機では、濃度センサーと連動して前処理済みのリチウムイオン原液を自動で滴下できる」と述べた。

LiSMICセルに配置されたセラミックス膜のユニット LiSMICセルに配置されたセラミックス膜のユニット[クリックで拡大]

 なお、LiSMICセルの両電極に電圧をかけることで同時に水の電気分解が起き、リチウム原液が供給される+極側からは酸素、純水が流れる−極側からは水素が発生する。発生したガス(水素と酸素)と回収液は気液分離管で分離される。星野氏は「LiSMICセルには9枚のセラミックス膜が搭載されている」と触れた。

赤い配管が気液分離管 赤い配管が気液分離管[クリックで拡大]

 また、このベンチプラント実証機が使用済みリチウムイオン電池を基に水酸化リチウムを生産した際の製造原価は1kg当たり500円の見込みで、2025年12月時点の市況価格である1kg当たり2500円を大きく下回る。

 星野氏は「従来の溶媒抽出法のように高価な化学薬剤を大量消費しない他、前処理工程からダイレクトに水酸化リチウムを回収するため、設備投資額とエネルギー消費を抑えられる。24時間365日の自動運転が可能なシステムとなっているため、人件費と稼働ロスも減らせる」と低コストで水酸化リチウムを製造できる要因を説明した。

リチウムイオン電池由来のリサイクルリチウムの要求仕様 リチウムイオン電池由来のリサイクルリチウムの要求仕様[クリックで拡大] 出所:LiSTie

 LiSTieは社内でベンチプラント実証機の最終調整を行った後、2026年5月から、耐火物や新素材の総合メーカーであるTYKとの共同研究として、水酸化リチウムを1日当たり1.5kgのペースで回収する実証試験を行う。2026年度中に同実証機で生産した水酸化リチウムのサンプルを販売するとともに、顧客との基本合意書(MOU)の締結を目指す。併せて、自社工場でのLiSMICの運用を通じてセラミックス膜の耐久性や運転ノウハウも蓄積する。「耐久性の目標は1年間の利用に対応することだ」と星野氏はいう。

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