杉政氏は「当社が開発を進める水電解システムは、高電圧電源や水電解スタック、高電圧変換器などで構成される。このシステムは、水電解スタックを高電圧変換器に接続することで、数十kVの直流高電圧で稼働できることを目指している。従来システムと比べて変圧器の数を減らせるため、当社の概算によれば、100MWクラスの水電解システムの場合、設置面積を半減できると考えている」と語った。
しかし、従来の絶縁配管では、高電圧水電解で求められる耐圧性、耐熱性、耐食性を十分な水準で同時に満たせず、高電圧下で水素ガスや水などを取り扱うことが困難だった。例えば、耐食性が基準を満たしていないとイオンが溶け出し水電解スタックを劣化させる。耐圧/耐熱性が基準を満たしていないと、高温(〜60℃)/高圧(3MPa)で配管の劣化と破損が生じる。これらに加えて、基準を満たしていないガスバリア性は水素の漏えいにつながる。
同社 研究開発グループ Next Research 主任研究員の大原伸也氏は「当社が開発を進める100MWクラスの高電圧水素製造システムは、水電解スタックを数十kVの電圧、つまり一般家庭用コンセント(100V)の数百倍の電圧で運用する。その際に、水電解スタックで低電圧の部分に設置した絶縁配管から水を供給したり、生産された水素を取り出したりする。ただし、意図しない経路に強い電気が流れ、配管の絶縁性が破壊されるケースがある。この際に、漏えいした水素が高電圧による放電などで着火すると水素爆発が起きる」と話す。
その上で、「当社が導き出した高電圧水電解で必要な仕様を、これまで使われていたセラミック製の配管やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の配管が満たせるかを調べた。その結果、セラミック製の配管は、耐電圧性や耐熱性、水素ガスバリア性で必要なスペックを有していたが、漏れ電流や耐圧性は対応できない他、接合部からイオンが溶出するという課題があった。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の配管は、耐圧性や水素ガスバリア性が求められる仕様を満たせなかった」と補足した。
これらの解決策として、同社は高電圧インバーターに関する知見や配管の材料構成を含む絶縁技術を生かし、高電圧水電解システムの実現に必要な絶縁配管を開発した。絶縁配管の開発に当たって、絶縁性や耐圧性、耐熱性、耐食性、水素ガスバリア性といった多くの性能を同時に満たせる複合材料の選定が課題となった。
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