イチから全部作ってみよう(27)「ACID」で示されるデータベースの4つの特性山浦恒央の“くみこみ”な話(196)(3/3 ページ)

» 2025年12月17日 06時00分 公開
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4.5 ノートが見当たらない……(永続性)

 お客が商品を購入した直後に、商品管理ノートが見当たらなくなった場合を想定してください(超レアケースですが)。在庫数が把握できません。

 これに対して、データベースでは、更新が確定したデータは、確実に保存できる仕組みが備わっています。例えば、データをディスクに書き込む前に、専用のログにも記録するというものです。そのため、サーバが突然停止したり、電源が落ちたりしても、復旧処理によって最後に確定した状態を正しく再現できます。

 商取引において「データが消えない」ことは、必要最低限の重要事項です。特に現代のITシステムは、障害時にデータが失われると、多方面に影響が及ぶことは確実ですね。そのため、データの消失を防ぐ仕組みは必須であり、データベースではこれを標準で備えています。この特性をDurability(永続性)といいます。

5.まとめ

 データベースの4つの基本特性であるACIDについて下記に簡単にまとめます。

Atomicity(原子性)

 1つの処理単位は、全体が「全て成功(データが正しく更新される)」または「全て失敗(元のまま)」のいずれかになる。途中まで更新される中途半端な状態を残さない。

Consistency(一貫性)

 処理の実行前後で、データが常に整合性ルールを満たしている。

Isolation(独立性)

 複数の処理を同時に並列に実行しても、それぞれが互いの影響を受けず、あたかも直列的に順序通りに1つずつ実行したかのように見える。

Durability(永続性)

 一度確定した変更は、障害が発生しても、システムが停止しても失われない。

6.終わりに

 今回は、データ設計の続きとして、データベースを使用するメリットについて説明しました。データ設計を行うときに、データベースの基礎知識を知っておくとデータのイメージを描きやすくなります。一歩ずつ覚えていきましょう。

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【 筆者紹介 】
山浦 恒央(やまうら つねお)

人間環境大学 環境情報学科 教授(工学博士)


1977年、日立ソフトウェアエンジニアリングに入社、2006年より、東海大学情報理工学部ソフトウェア開発工学科助教授、2007年より、同大学大学院組込み技術研究科准教授、2016年より非常勤講師。2025年4月より、人間環境大学環境情報学科教授。

主な著書・訳書は、「Advances in Computers」 (Academic Press社、共著)、「ピープルウエア 第2版」「ソフトウェアテスト技法」「実践的プログラムテスト入門」「デスマーチ 第2版」「ソフトウエア開発プロフェッショナル」(以上、日経BP社、共訳)、「ソフトウエア開発 55の真実と10のウソ」「初めて学ぶソフトウエアメトリクス」(以上、日経BP社、翻訳)。


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