また、現場レベルの課題も浮き彫りとなった。「サプライチェーンのリスク管理にデジタルツールを活用する場合のネック」として回答のトップに並んだのは「現場の業務逼迫(ひっぱく)(27.2%)」と「情報の分散・属人化(27.0%)」である。製造業の調達部門の現場においては、依然としてサプライヤー情報のExcel管理や、セキュリティチェックシートの回収/更新を手作業で行っており、業務を圧迫している。
人手不足が加速する中、人的リソースに頼った点検活動には限界がある。現場のニーズとしても、「今後重視したい項目」として「サプライヤー情報の可視化(42.4%)」が最多となった。「サプライヤーの経営状態(42.0%)」に関する情報不足を訴える声も強い。有事の際の事後対応だけでなく、平時から取引先の健全性やリスク情報を網羅的に監視できる体制への転換が求められている。
こうした課題に対し、SpecteeではAI(人工知能)を活用したリアルタイム危機管理サービス「Spectee SCR」を展開している。同製品は、各サプライヤーの製品や部品単位の情報を登録/管理し、気象データやニュース、SNS上の情報をAIで解析することで、災害やシステム障害などによる生産への影響をリアルタイムに可視化するソリューションだ。
平時からのサプライヤー管理の強化を支援するため、2025年11月には「サプライヤーのリスク評価」機能をリリースした。従来は現地監査などに頼っていた評価プロセスをデジタル化し、BCP(事業継続計画)の策定状況や経営の安定性といった項目を常時モニタリングするものだ。
村上氏は、「AIやリアルタイムデータを活用して『見えないリスク』を可視化し、判断を早めることが、これからのレジリエンス経営の前提になる」と強調した。複雑化するリスクに対し、アナログ管理からの脱却は製造業にとって待ったなしの課題である。
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