国産透明PIフィルムが民間低軌道衛星の太陽電池保護膜で採用：材料技術

強い紫外線やプラズマなどにより過酷な地球低軌道。この環境下で1年以上の環境耐久テストに耐え抜いた透明ポリイミド（PI）フィルムが、ついに実用化フェーズに入る。

[遠藤和宏，MONOist]

　ポリイミド（PI）樹脂をはじめとする高機能素材の開発、製造、販売を行うアイ.エス.テイは2025年12月4日、透明PIフィルム「TORMED（トーメッド）」が、複数の民間試験衛星で太陽電池保護膜として実装され、1年以上の低軌道環境耐久テストをクリアしたと発表した。

　この結果を受けて、民間商業衛星に搭載されるシリコン太陽電池パネルでTORMEDの採用が決まったため、アイ.エス.テイではTORMEDの本格的な量産を2026年に開始する。なお、TORMEDは、同社独自の分子設計技術により、軽量性、耐放射線性、光学特性を実現した透明ポリイミドだ。

過酷な環境で使用される電子デバイスでも展開

　地球低軌道は、強い紫外線やプラズマ、広範な温度サイクルなどにより、材料にとって過酷な環境となっている。今回の採用は、TORMEDがこれらの条件下で高い透明性と耐久性を維持し、太陽電池の長期発電性能を支える材料として評価されたためだという。

　同社では、顧客から太陽電池の軽量化を目的に12.5μmの薄膜なTORMEDのニーズも得ている他、宇宙機器向け太陽電池で主流であるリジット型太陽パネルだけでなく、フレキシブル型太陽パネルへの採用も視野に入れている。

　今後は、本格量産に向けて生産体制を強化するとともに、宇宙用途に加えて、過酷な環境で使用される電子デバイスや次世代エネルギー関連分野に向けてもTORMEDの展開を進めていく考えだ。

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