ダイハツ工業と豊田中央研究所、トヨタ自動車九州は、トヨタ自動車九州の小倉工場において、ダイハツと豊田中研が共同開発したマイクログリッドシステムの実証実験を開始したと発表した。
ダイハツ工業と豊田中央研究所(豊田中研)、トヨタ自動車九州の3社は2025年10月7日、トヨタ自動車九州の小倉工場(北九州市小倉南区)とオンラインで会見を開き、同工場においてダイハツと豊田中研が共同開発したマイクログリッドシステムの実証実験を開始したと発表した。このマイクログリッドシステムはコンパクトSUV「ロッキー/ライズ」などHEV(ハイブリッド車)の電動システムの技術を応用するなどした「SPH(Smart Power Hub:スマートパワーハブ)」を採用しており、一般的なマイクログリッドシステムと比べてエネルギーロスを45%削減するとともにサイズを10分の1に小型化しており、μ秒レベルの高速制御による瞬停レスも可能にしているという。今回の実証実験を通して実用化を進め、トヨタグループが目標に掲げる2035年までのグローバル工場でのカーボンニュートラル達成に貢献してく考えだ。また、工場だけでなく自動車販売店などへの横展開も検討している。
ダイハツ工業 代表取締役副社長の桑田正規氏は「カーボンニュートラルの達成には、エネルギー効率の改善とともに再生可能エネルギー(再エネ)の有効活用が必須だ。今回のマイクログリッドシステムの実証実験は、豊田中研の要素技術開発力、トヨタ自動車九州の再エネ利活用の知見、そしてダイハツの良品廉価なクルマづくりの技術/ノウハウを融合したプロジェクトである」と語る。
マイクログリッドシステムの中核となるSPHは、豊田中研が独自に開発した電力変換装置をベースに、HEV専用インバーターなどダイハツ工業の関連技術を組み合わせて開発された。一般的なマイクログリッドシステムが交流主体のシステム構成になっているのに対し、SPHを中核とする新開発のマイクログリッドシステムは直流主体であり、コンパクトかつ高効率になっている。
一方、トヨタ自動車九州は、太陽光で発電したグリーン電力による水素の製造および工場での使用や、HEVのバッテリーなどをリユースした蓄電池「KRe:Ba」の実証など、再エネの積極的な活用によるカーボンニュートラル化に取り組んできた。今回の実証では、小倉工場で生産しているロッキー/ライズ向けモーターシャフトの生産ラインの電力の一部に、マイクログリッドシステムに由来する電力を使用する。「今回の実証実験でシステムの有効性や信頼性を確認し、さらなる進化と改善につなげたい」(桑田氏)という。
なお、ダイハツ工業としては、滋賀県竜王町で実施しているバイオガス実証プラントに続きエネルギーの地産地消に向けた取り組みの一つになっている。
マイクログリッドシステムは、太陽光や風力など地域で発電される再エネを最小限の配電網を通して有効活用できることから国内でも導入が進んでいる。ただし、一般的なマイクログリッドシステムは、電気を作る再エネや電気をためる蓄電池においてそれぞれ交流に変換してから入出力しており交流主体のシステム構成になっている。今回新たに開発したマイクログリッドシステムは、工場などで電気を使用する際にのみ交流に変換する以外は直流で電力を扱う直流主体のシステム構成である点が異なる。
直流マイクログリッドシステムは交流マイクログリッドシステムと比べて、電力変換の回数や機器が少なく、電力変換に伴う電力損失を少なく済ますことができる、一方で、技術難易度が高いためまだ普及していないことが課題であり、大規模対応が容易な交流マイクログリッドシステムに比べて小規模での利用に適しているという違いもある。
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