中央大学は、医薬品の製造工程で錠剤をリアルタイムかつ非破壊で全数検査する基盤システムを開発した。薄膜カーボンナノチューブ光イメージャーを搬送ラインに実装し、リアルタイムで判別できる。
中央大学は2025年9月11日、医薬品の製造工程で錠剤をリアルタイムかつ非破壊で全数検査する基盤システムを開発したと発表した。薄くて軽いカーボンナノチューブ(CNT)型の光イメージャーシートを搬送ラインへ実装することで、錠剤内部を透視して成分を同定し、取り違えや混入異物を検知する。
錠剤非破壊全数検査システムの開発にあたり、研究チームはまずシート状のCNT型イメージャーを開発。このイメージャーは、目に見えないミリ波(MMW)、テラヘルツ(THz)、赤外線(IR)を高感度に検出する。
次に、創薬の搬送ラインを想定して、ベルトコンベヤーに搭載する錠剤ホルダーを3Dプリンタで造形し、試料背面にシート状CNT型PTEイメージャーを設置した。この時点で、観察可能な錠剤の上限は厚さ7mm、濃度20%となり、含有成分濃度が低い鎮痛剤などへの適性を示した。
これに続いて、インライン形式のリアルタイムTHz-IR非破壊モニタリングシステムを構築。このシステムは、事前にデータベース化した分光スペクトルから、対象成分に直結する照射波長を選定する。多波長の分光装置とは異なり、単一帯域の小型光源を用いるため、ラインへの組み込みが容易だ。
実証では、鎮痛剤、解熱剤、抗血小板剤の3成分を事例化し、サブTHz(909μm)、長波長IR(6.13μm)、短波長IR(4.33μm)の3波長光源を配列してCNT型PTEイメージャーとともに集積した。現時点の最速動作速度は3mm/秒で、一般的にノイズが出やすい条件でもIR帯で明瞭な透視画像を得た。
さらに、錠剤のサイズを実寸の医薬錠剤サイズに拡張したほか、含有成分濃度も鎮痛剤成分100%を採用。透視モニタリングにおいて、CNT型PTEイメージャーが貼り付けシートデバイスとして高感度動作を発揮していることが確認できた。
今後は、高解像度化が期待できるインクジェット印刷デバイスへの実装、回路最適化によるスピード向上、MMW-IRの3D形状復元との融合による多機能化に取り組む。
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