機上で整った?FAメルマガ 編集後記

» 2025年09月30日 12時00分 公開
[長沢正博MONOist]

 この記事は、2025年9月30日発行の「FA メールマガジン」に掲載されたMONOistの編集担当者による編集後記の転載です。

 先日、欧州最大級の工作機械展示会「EMO Hannover 2025」を取材してきました。

 日本企業がプレゼンスを持つ工作機械の展示会ということもあって、やはり日本企業の出展が多いですね。取材の一部は既に記事化していますので、内容はそちらをご覧いただければ幸いです。また、引き続き記事を公開していく予定です。

・欧州最大級展示会に“DMG森精機ワールド”、新たな製品や自動化/DXツール披露

・DMG森精機社長が図る工作機械のソフトウェアデファインド化、MX実現への道のり

・牧野フライスが欧州で重量ワークをしっかり削れる5軸横型MC披露、新制御装置も

・ニデックが自動化対応高めた横型MC、次世代EV向けで需要急増の内歯車研削盤も

機上で整った?

 最近は飛行機の中でもWi-Fiが使えます。機内Wi-Fiの導入が始まった当初は「これでは機上でも仕事に追われる!余計なお世話だ!」といった声をインターネットで目にしたような記憶もありますが、個人的には家のあれやこれやに煩わされずに仕事に向かえる点で、大変ありがたい機能です。

 水平飛行に入るまではテーブルは出せませんので、その間は、直前に買った文庫本を読んで過ごします。今回は、東野圭吾さんのミステリーでした。

目にするだけで心踊る航空機 目にするだけで心踊る航空機

 元来、一人の時間が大好物ですので、ああいった時間はまったく苦になりません。

 そして、一人でぽつんと(隣に人がいるわけですが)座っていると、学生時代に交通量調査のアルバイトをしていた時のことを思い出します。

 防衛庁(当時)が近くにあったので、市ヶ谷辺りだったでしょうか。通り過ぎる人の姿を見てカチカチとカウンターを押しながら、大学を出たらこの仕事(メディア)をやってみようという気持ちが固まっていったんですね。

 大それた決意を抱いたとかでは全くなく、恐らく卒業したら何しようかとぼんやり考えながら作業しているうちに、自分の頭の中でいろいろなものが組み上がって、「よし、これでいこう」という腹落ちにつながったんだと思います。

 少し前に流行った言い方をすれば“整う”でしょうか。まあ、それが卒業するほんの数カ月前だったために、その後、いろいろ大変なことになるのですが……。

ハノーバーの空 ハノーバーの空

 ただ似たような感覚はタイで自動車を長時間運転している時にも抱きました。日本のある高校では夜を徹して長距離を歩く「歩く会」という行事があるそうですが、個人的には体力や忍耐力、連帯感の養成などに加えて、先ほどの表現を借りれば歩き続ける中で“整わせる”側面があるのではないかなと、OBでもないのに想像しています。

 その歩く会をモチーフにした恩田陸さんの「夜のピクニック」という小説も出版されました。その映画版に出演した女優の多部未華子さんに別件で一度取材したことがあります。

 当時、「多忙ですよねえ」みたいな水を向けたところ、「皆さんに心配していただくのですが、大丈夫なんです。自分で決めたことだから」と返されて、「あ、本当にこの人は大丈夫なんだな」と、その返答から醸し出された芯の強さみたいなものに感心した記憶があります。

ハノーバーの展示会場内では、こういった緑の風景に癒されます ハノーバーの展示会場内では、こういった緑の風景に癒されます

 話が脱線しました。

 要はタイパ(タイムパフォーマンス)みたいな言葉が生まれる一方で、効率的ではない側面にも大事なことが隠されているのではないか、ということです。

 え、「機内Wi-Fiなんか使っていたら整うどころではないじゃないか」ですって?

 その批判は甘んじて受けようと思います。

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