パナソニックのシェーバー事業では、彦根工場が年産180万台規模の上位モデルの生産を開発から製造まで一貫して行うマザー工場の位置付けになっている。中国の広州工場は準マザー工場であり、年産270万台規模で普及モデルを生産している。そのモノづくりの強みについて南波氏は「こだわって磨き上げてきた『変わらないこと』と社会の変化に合わせて『変えていくこと』を掛け合わせ、モノづくりの強みを生み出している」と述べる。
「変わらないこと」としては「高級シェーバーとして5枚刃/6枚刃の複数の製法ができること」「ラムダッシュ史上最速で小型化を実現しているリニアモーター技術」という2つのコア技術を挙げる。パームインが開発できたのも、この小型化技術が大きな役割を果たしている。
一方、「変えていくこと」としては「新たな品質評価」「伝統と未来の融合を図るAI活用と自動化」「社会環境への貢献」の3点に取り組んでいる。5枚刃/6枚刃の進化やパームインのような小型シェーバーが誕生したことにより、機種の特徴に応じた適切の品質評価を徹底している。人が目視で実施している刃穴の開き具合や変形/欠けなどを確認する「外刃の検査」についてはAI(人工知能)を活用。人間の目で確認していた項目について、熟練の作業者の知見をAIに学習させて不良品を選別する自動検査機を導入し、検査効率を50%向上させた。自動物流システムを導入して在庫保管面積の33%の削減を目指すなど、AI活用だけでなく工場の自動化も推進している。また、環境に配慮した素材をパームインに活用するなど、サステナブルなモノづくりに挑戦し、シェーバーに使用している外刃の生産方法を見直してCO2排出量の削減にも取り組んでいる。
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