ユーザーインタフェース(UI)は、驚くほどシンプルです。いくつかの物理的なパラメーターを設定するだけで、ほとんど何も操作しなくても解析を実行できるといっても過言ではありません。少なくとも、一般的なCFDソフトウェアで必要とされるような境界条件の設定すら不要なほど、ユーザーフレンドリーな設計になっています。
そして、誰もが――もちろん筆者も含めて――気になるのがコストです。
AirShaperでは、計算ごとにクラウドクレジットを使用する形式が採用されており、明確な料金テーブルも用意されています。必要なクレジット数は、解析精度によって異なります。
「Basic」と呼ばれる精度では、比較的シンプルな形状を扱い、100万要素までで大まかな結果を得ることができ、1回の計算につき1クレジットが必要です。一方、「Regular」では、扱える要素数が1000万までとなり、より詳細な結果を得られる代わりに、1計算当たり10クレジットを要します。
また、年間プランも用意されており、個人設計者やスタートアップでも利用しやすい価格帯からスタートできます。例えば、最も安価な「Discovery」プランは990ユーロで、1年間有効な25クレジットが含まれています(ユーロ建ての金額であるため、為替レートには注意が必要です)。
安価とはいえ、誰にとっても気軽に使える金額というわけではないかもしれませんが、従来のCFDを知っている人であれば、驚くほど試しやすい価格帯だといえるでしょう。
さて、多くの人が最も気になるポイントである「使い勝手」について見ていきましょう。
前述の通り、このサービスのUIは非常にシンプルで、よくここまで思い切って簡素化したものだと感じるほどです。
もちろん、より高度な計算が可能なプランを契約すれば、もう少し細かい設定も行えるのでしょうが、比較的単純なモデルであれば、ほとんど設定なしで解析を進められる印象です。
チュートリアルも用意されていますが、恐らくそれすら必要ないほど、操作は直感的で簡単です。
3Dデータのアップロードは非常に簡単です。
対応するデータ形式はSTLの他、OBJ、STEP、IGESなども利用可能ですが、STL以外のフォーマットを使用するには年間ライセンスが必要なようです。とはいえ、多くの3D CADソフトウェアではSTL形式でのエクスポートに対応しているため、大きな問題にはならないでしょう。
ファイルはドラッグ&ドロップするだけでアップロードできるため、操作に手間は掛かりません。また、ダイアログを確認したところ、「Onshape」ユーザーであれば、データをインポートすることも可能なようです。
解析条件の設定についてですが、前述の通り、通常であれば入力が必要となるような細かな項目はほとんど見当たりません。解析対象となるオブジェクトの向きや流速、流体の種類(空気か水か)、地面の上か空中か――といった一般的な物理パラメーターを入力するだけで済みます。そのため、流体解析にあまり慣れていない方でも、戸惑うことなく操作できるでしょう。
解析メッシュの細かさは、BasicかRegularかといった解析精度の設定によって自動的に決まります。メッシュの粒度は、数値情報だけでなく、視覚的なプレビューでも確認できるため、直感的に把握しやすくなっています。
つまり、通常であれば入力が必要な細かい設定が、AirShaperではほとんど自動化されているということです。
もちろん、これにはトレードオフもあり、自動化されたシナリオに収まらない解析は実行できません。解析対象はおのずと限定されることになります。
また筆者としては、非常に厳しい条件――つまり、パラメーターを慎重に調整しないと計算が発散してしまうようなケース――に対応する際、どのように扱うのかという懸念も残ります。とはいえ、シンプルなUI設計と同様に、解析のシナリオにおいても一定の割り切りが求められるのでしょう。
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