三菱デジタル基盤「Serendie」を活用、“AIが見守る”止まらない放電加工機へ工作機械(2/2 ページ)

» 2025年08月01日 07時45分 公開
[長沢正博MONOist]
前のページへ 1|2       

デジタル基盤「Serendie」活用サービスを開始

新しいアニール制御システムなどを搭載 新しいアニール制御システムなどを搭載[クリックで拡大]

 止まらないでは、新しいワイヤ搬送ユニットにより自動結線性能を向上させ、連続加工時間を伸長させた。加工開始時には、ワイヤをワークに通す結線作業が不可欠だ。ワイヤはボビンに巻かれた状態で放電加工機にセットされており、巻き癖(カール)が付いている。そのワイヤを焼鈍し、真直性を向上させるアニール処理の新しい制御システムやリトライ機構によって、自動結線成功率を大きく改善した。

 加工機の稼働や保守の状況を遠隔監視できる「iQ Care Remote4U」を活用したアフターサービスとして、「安心サポート」という新しいサポートプランを提供する。安心サポートは主に2つのサービスで構成される。

三菱電機の高橋宣行氏 三菱電機の高橋宣行氏

 1つ目の見守りサービスでは、三菱電機のデジタル基盤「Serendie」を活用して、AIがユーザーの機械を常に見守り、万が一の時にも三菱電機が積極的にサポートする。FAシステム事業でSerendieを使ったサービスの投入は初めてという。

 三菱電機 産業メカトロニクス製作所 放電システム部長の高橋宣行氏は「従来は加工機にアラームが発生してから、ユーザーはサポートセンターに連絡し、状態を把握し、対処方法を検討、復旧させるという流れだったが、見守りサービスではAIが常に見守り、稼働状況などからアラームが起こりそうだったり、実際に起こったアラームの内容からサポートが必要だと判断した時はわれわれから積極的にサポートに入り、問題を早期に解決する」と語る。

向上した自動結線性能の概要(左)と、SerendieとAIを活用した「見守りサービス」(右)[クリックで拡大]出所:三菱電機

 2つ目の事前診断サービスは、訪問点検前に遠隔で事前診断することで、加工機の状態に合わせた点検を実施する。現状は、サービススタッフが現地を訪問して初めて機械の状態を見てから、必要な部品などをそろえて再度訪問している。機械の稼働状況やユーザーが行った診断プログラムの回答を通して問題点をあらかじめ見つけた上でメンテナンスできる。

 省エネでは、加工機やフィルターの状態に合わせてポンプの出力を最適化する省電力ポンプ制御を開発した。同社によれば、従来機の加工に比べ、約30%消費電力を削減できるという。「最新の技術を簡単に使っていただくことを目指してMGシリーズを開発した。今後も技術の未来を、誰にでもを合言葉に技術開発にまい進していく」(高橋氏)。

 MGシリーズはストロークが400×300×220mmの「MG12」「MG12R」と、600×400×310mmの「MG24」「MG24R」の4機種があり、価格はMG12が1980万円、MG24が2350万円、より高精度なMG12Rが2250万円、MG24Rが2650万円(本体価格、いずれも税別)となっている。加工液は水だ。グローバルで年間1200台の販売を目指す。

⇒その他の「工作機械」の記事はこちら

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.