図2に、ボディーを構成する主要な骨格部位の部品を示す。
自動車の車体部位を大まかに分けると、図2中の(1)〜(5)と(10)(11)のフロント、(6)〜(8)と(12)のセンター、(9)(13)(14)のリアから構成されている。
図2の右側にある(8)〜(14)までの部品で構成される車体部位は、車体の底部分に用いられることからアンダーボディーと呼ばれる。アンダーボディーは、クルマの構造上、一番の基礎となる部分であり、走行機能や安全性能のために一定の強度、剛性、耐久性が求められる。そのために、(10)〜(14)のようなメンバー※1)という強度部材が加えられたり、補強材が当てられたりする。
※1)メンバーとは強度部材のことを指す。メンバーやサイドメンバー、クロスメンバーなどの種類があるが、はっきりとした分類法はない。モノコック構造(シャシーフレームを車のボディーに取り込んだ一体構造のこと)では、一部分の大荷重は補強部材のサイドメンバー/クロスメンバーで受け、インナーパネル/アウターパネルがその荷重を分散させる。安くて強い材料が適している。ちなみに、クロスメンバーとは、車体の剛性や強度を向上させるために使われている部材で、自動車に対して横方向に設けられている。他にも、フロアを強化するフロアクロスメンバーや、前部に設置されているフロントクロスメンバーなどがある。また、シャシーフレームとは、主にトラックの荷台下部に装備された支持パーツのことで、一般的にはクルマの骨格を構成する機構で、シャシーまたはフレームと呼称される場合が多い。シャシーフレームは、荷台の全ての重量を支える重要な部位となっている。
これらのボディーを構成する複数の部品を一体成形するギガキャストの採用によって、以下のような効果が得られると考えられる。
※2)モジュール(module)とは、システムや製品を構成する独立した機能単位のこと。ソフトウェアやハードウェアにおいて、特定の機能を持つ部品や要素を指す。モジュール化は、複雑なシステムを分割し、開発や保守を効率化する手法。工業製品におけるモジュールは、規格化された交換可能な部品を指す。また、モジュール生産は、モジュールを組み立てて製品を作る生産方法のことである。
トヨタ自動車は図3に示すように、将来的にはボディー(車体)を新モジュール構造として捉え、創意工夫による高速かつ高度な生産の実現を目指している。
新しいモジュール構造は、フロント部/センター部/リア部に3分割できる。ギガキャストの採用による大幅な部品統合は、車両開発費や工場投資の削減に貢献する。さらに、自走式の生産ラインを組み合わせて工程と工場への投資を半減する方針だ。
なお、センター部は、EVの場合は主にバッテリー部分となるため、3Dプリンタなどで作ることが想定されている。そして、フロント部とリア部をギガキャストで作る手法が今後検討されるようだ。
このように、ギガキャストなどを用いて開発費の半減、工場投資の半減をもくろんでいるが、さらに圧倒的な開発のスピードも得ることができる。企画から意匠デザイン、試作、量産設計、製造、アセンブリ、完成、納車までのリードタイムを削減し、顧客志向に即対応したクルマづくりの新体制が可能となり、世界市場を席巻できるようになる。
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