テープディスペンサーで最も注目すべき点は、やはりテープがきれいに切れる仕組みではないでしょうか。
今回は、筆者が手に入れたテープディスペンサーとセットになっていたセロハンテープを題材に、その仕組みを見ていきます。なお、筆者が立ち寄った100円均一ショップでは、プラスチック刃と金属刃の2パターンの商品が販売されていました。
セロハンテープは、セルロースやポリプロピレン(PP)といった薄いフィルム状の素材に粘着剤を塗布して作られています。このテープを任意の位置でカッター刃に押し当てることで、必要な長さにカットできます。
このカットの仕組みですが、実は刃物で「切る」というよりも、「引き裂く」に近いイメージです。カッター刃はまずテープに小さな穴を開け、そこから裂け目を広げるようにしてテープをカットします。つまり、カッター刃はテープを直接切るのではなく、「小さな穴を開けて引き裂く」という役割を担っているのです(図5)。
では、もう少し細かく見ていきましょう。
カッター刃は、一般的にギザギザの形状をしていますが、これはテープを直接切断するためではなく、小さな穴を開けるためのものです。テープを引き伸ばしながらカッター刃に押し当てると、ギザギザの突起が点接触し、一直線上に複数の小さな穴が開きます。
さらに力を加えてテープをカッター刃に押し当てることで、開けられた小さな穴が次第に広がり、裂け目が形成されていきます。
最終的に、裂け目がつながってテープが引き裂かれ、きれいにカットされた状態になります。
つまり、最初に開けられた小さな穴が“切り取り線”のような役割を果たし、スムーズなカットを可能にしているのです。
テープを使うとき、水平方向に引っ張ってもうまくカットできなかったという経験はないでしょうか。これは、テープがカッター刃にしっかりと押し当てられておらず、小さな穴が開きにくいこと、さらに水平方向には十分な応力がかかりにくいことが原因です。そう考えると、うまくカットできないのも納得できるはずです。
テープを垂直方向に引っ張りながら、カッター刃のギザギザにしっかりと押し当てることで、小さな穴が開き、そこに垂直方向の応力が加わって裂け目が広がり、スムーズにカットされるという仕組みになっています。
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