時々刻々と変化する温度分布CAE解析とExcelを使いながら冷却系設計を自分でやってみる(8)(3/6 ページ)

» 2025年05月26日 09時00分 公開

フーリエ級数を使おう

 この手の微分方程式は、フーリエ級数を使って解くことができます。そこで、フーリエ級数が使えるように少し工夫をしましょう。図3を拡張し、図4のように設定します。

 よく「x=0の温度はどうなるのか」と聞かれるのですが、この関数をフーリエ級数で表すと必ず原点を通ります。つまり、x=0における温度は0[degC]となります。これからはフーリエ級数によるグラフで説明します。

t=0[s]の温度分布 図4 t=0[s]の温度分布[クリックで拡大]

 周期2lのフーリエ級数は以下でした(参考文献[1])。

式16 式16
式17 式17
式18 式18

 式9式10の解は次式でした(式19式20)。

式19 式19
式20 式20

 これを式6に代入したものが解です(式21)。

式21 式21

 線形微分方程式に複数の解があったとしたら、それらの和も解となるので次式が成立します(式22)。

式22 式22

 t=0[s]のときの温度分布は次式となります(式23)。

式23 式23

 式23は、フーリエ級数の式(式16)とそっくりです。ということは、図4の関数をフーリエ級数で表現すれば、それが初期条件(t=0[s])を満たす解となります。

 図4の関数は奇関数であるため、式16におけるanは0です。また、図4の関数は上下対称であることから、a0=0ですね。これは式23にも同じことがいえます。sin μxに対応するのは、sin nπ/l x2)なので、μ=nπ/l3)となります。

(左)が※2、(右)が※3の正しい表記 (左)が2、(右)が3の正しい表記
式24 式24

 t=0[s]のときの温度分布は次式となります(式25)。

式25 式25

 では、早速式18を計算しましょう。

式26 式26[クリックで拡大]

 式26の(−1)nは符号を反転させるために使っています。式16式25を見ると次式が成立します(式27)。

式27 式27

 式27式25に代入します(式28)。

式28 式28

 式28を計算しましょう。図5に示します。Tinit=0[degC]とし、n=50までの和です。サイン関数の和なので必ず原点を通ります。

式28の計算結果 図5 式28の計算結果[クリックで拡大]

 式24式27を代入すると、時々刻々と変化する温度分布が求まります(式29)。

式29 式29

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