サントリーの3Dプリンタ活用事例 ラインセットアップに必要な時間を半分に3Dプリンタニュース(1/2 ページ)

マークフォージド・ジャパンは、記者会見を開き、日本市場での動向や導入事例、AMプラットフォームの概要、国内新規代理店との契約、今後の展開について紹介した。

» 2025年03月17日 07時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 米Markforgedの日本法人であるマークフォージド・ジャパンは2025年3月11日、記者会見を開き、日本市場での動向や導入事例、AMプラットフォームの概要、国内新規代理店との契約、今後の展開について紹介した。

サントリーが3Dプリンタで新製品の製造速度を加速

Markforged K.K カントリーディレクター ノースアジア統括の森道明氏 Markforged K.K カントリーディレクター ノースアジア統括の森道明氏

 Markforgedの3Dプリンタは、大手と中小の企業や教育機関、政府機関で採用されている。Markforged K.K カントリーディレクター ノースアジア統括の森道明氏は「日本市場は試作品を製作する用途でMarkforged製3Dプリンタの販売台数が伸びている。中でもローエンドの3Dプリンタの販売数が好調で、工場現場向けのタイプも堅調だ。ハイエンドの3Dプリンタも販売がこれから増加して行く予定だ」とコメントした。

Markforgedの3Dプリンタ導入企業 Markforgedの3Dプリンタ導入企業[クリックで拡大] 出所:マークフォージド・ジャパン

 導入事例について一例を挙げると、サントリーではMarkforgedの3Dプリンタを用いて治具や工具を製造することで、外部委託によりこれらを作製する方法と比べて、費用とリードタイムを減らした。加えて、生産ラインのセットアップと切り替えに必要な時間を半減するとともに、製造工程の短縮を実現して、新製品の製造速度も加速できた。

 サントリーの榛名工場(群馬県渋川市)では、Markforgedの金属3Dプリンタを1万2000時間以上稼働し、1100個以上の部品を製造。サントリーグループでは、榛名工場におけるMarkforged製3Dプリンタの効果を確認した後、複数の拠点でMarkforgedの金属3Dプリンタを採用した。

サントリーの導入事例 サントリーの導入事例[クリックで拡大] 出所:マークフォージド・ジャパン

 森氏は「現在、グローバルで使用されているMarkforgedの3Dプリンタの台数は1万4000台以上だ。そのうち、約1500台は日本で使われている。サントリーで利用されているMarkforgedの3Dプリンタは数十台だ」と話す。

 MarkforgedのAMプラットフォームは主に、FDM(熱溶解積層)方式3Dプリンタ「FX10」をはじめとする産業用3Dプリンタ、カーボンファイバー強化コンポジット材および工業用強度金属などのマテリアル、インテリジェントソフトウェア「Eiger(アイガー)」から成る。

MarkforgedのAMプラットフォーム MarkforgedのAMプラットフォーム[クリックで拡大] 出所:マークフォージド・ジャパン

 FX10は工業用金属および複合材料のプリントに対応する産業用3Dプリンタで、レーザー測定機能や材料格納庫、7インチのタッチスクリーン、高性能なビルドチャンバーとバキュームベッドを搭載している。レーザ測定機能はプリントヘッドに取り付けられた2つの光学センサーとレーザーマイクロメーター、ビジョンモジュールから成る。

 2つの光学センサーはパーツの品質やプリンタの正常性を確かめられる。レーザーマイクロメーターはプリント中の寸法検証(インスペクション)と機械校正を行う。ビジョンモジュールは、校正部品の詳細な画像を捉え、プリンタの性能を判定し最適化するために使用される。

 材料格納庫には、個別に密封された格納庫に4つのスプールを収納でき、自動での材料交換と迅速なスプールのローディングをサポートし、ユーザーの負担を軽減する。

 7インチのタッチスクリーンは、プリントの開始、リアルタイムでのマシンの状態確認と手動制御、自動校正作業を行える。

 ビルドチャンバーは60℃まで加熱可能で、高速で高品質な部品をプリントするのに役立つ。アルミ製のバキュームベッドは加熱可能で、レーザーマイクロメーターのスキャンによって、校正に使用される。「FX10は2024年度に5台の導入実績がある」(森氏)。

「FX10」 「FX10」[クリックで拡大] 出所:マークフォージド・ジャパン
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