三菱ケミカルグループ ディスプレイ関連需要が好調も炭素事業の不振などで減益製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

三菱ケミカルグループは、2025年3月期第3四半期の連結業績(2024年4月1日〜12月31日)で、売上高は前年同期比3%増の3兆3315億円となるも、営業利益は同11%減の1895億円となった。

» 2025年02月10日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 三菱ケミカルグループは2025年2月6日、2025年3月期第3四半期の連結業績(2024年4月1日〜12月31日)について発表した。

MMAモノマーなどの市況の上昇による売買差の改善でコア営業利益が上昇

 2025年3月期第3四半期における連結業績の売上高は前年同期比3%増の3兆3315億円となるも、営業利益は同11%減の1895億円となった。営業利益から非経常的な要因により発生した損益を除外したコア営業利益は34%増の2472億円を記録した。

2025年3月期第3四半期における連結損益計算書 2025年3月期第3四半期における連結損益計算書[クリックで拡大] 出所:三菱ケミカルグループ

 同期間における世界経済は、米国では良好な雇用環境が個人消費を下支えしたことにより底堅い成長が続き、欧州においてはインフレの鎮静化や金融政策を背景に持ち直しの動きがみられ、日本では設備投資の増加やインバウンド需要の拡大に伴い緩やかに回復した。一方で、中国は不動産市場の低迷などによる成長の鈍化がみられるなど、地域や業種により濃淡のある状況が継続した。

 また、ディスプレイ関連は中国における補助金政策もあり上期に続き下期も好調に推移し、半導体関連は生成AI関連需要のけん引により緩やかな回復基調にあった。しかし、自動車や食品関連市場などの一部地域/分野では軟調さがみられた。

 先行きについては、米国における新政権の政策動向、中国における不動産不況の長期化、地政学リスクの拡大、金融資本市場の変動などの影響が懸念されるなど、依然として不透明感のある状況が続いている。

 セグメント別では、スペシャリティマテリアルズセグメントの売上高は同5%増の8128億円だった。コア営業利益は同77%増の344億円となった。同セグメントのコア営業利益は、ディスプレイ、半導体、バリア包材の用途などの需要が回復したことによる販売数量の増加などで増加した。同セグメントは、アドバンストフィルムズ&ポリマーズサブセグメント、アドバンストソリューションズサブセグメント、アドバンストコンポジット&シェイプスサブセグメントから成る。

スペシャルマテリアルズセグメントのコア営業利益増減分析 スペシャルマテリアルズ事業のコア営業利益増減分析[クリックで拡大] 出所:三菱ケミカルグループ

 アドバンストフィルムズ&ポリマーズサブセグメントは、事業の譲渡と撤退に伴う影響などがあったが、為替の影響に加え、ディスプレイ用途やバリア包材用途などの需要が緩やかに回復したことによる販売数量の増加や、各種製品の販売価格の維持/向上などにより、売上高は増加した。三菱ケミカル 執行役員 最高財務責任者の木田稔氏は「2024年の上期に中国の大型商戦や国際スポーツイベントの開催によりテレビの需要が高まり、パネルメーカーの稼働が増え、ポリエステルフィルムや偏光版向けのOPLフィルムの需要が増加した」と語った。

 アドバンストソリューションズサブセグメントでは、半導体やディスプレイ用途などの需要が増加したことで販売数量が増加した。為替影響はプラスに働いたが、電気自動車(EV)用途の欧米における販売数量の減少や、一部事業における販売価格の低下などにより、売上高は減少した。「半導体製造プロセス向けの材料や、精密洗浄ビジネスと水処理向けの材料の数量が増えた」(木田氏)。

 アドバンストコンポジット&シェイプスサブセグメントでは、イタリアの炭素繊維複合材料メーカーであるC.P.Cの完全子会社化の影響と高機能エンジニアリングプラスチックの需要が回復したことによる販売数量の増加や為替影響により、売上高は増加した。「半導体製造装置用途で高機能エンジニアリングプラスチックの需要が高まり、販売数量が増えた。一方、炭素繊維については、風力発電向けは需要が伸びたが、相対的に利益率が高い圧力容器用途で他社との競争激化により販売数量が減少した」(木田氏)。

 MMA&デリバティブズセグメントの売上高は同20%増の523億円で、コア営業利益は約1153.8%増の326億円となった。同セグメントのコア営業利益は、MMAモノマーなどの市況の上昇による売買差の改善などにより増加した。

 同セグメントはMMAサブセグメントとコーティング&アディティブスサブセグメントで構成される。

 MMAサブセグメントでは、MMAモノマーなどの市況の上昇に加え、為替影響により売上高は増加した。コーティング&アディティブスサブセグメントでは、塗料、接着剤、インキ、添加剤用途などの需要が緩やかに回復したことによる販売数量の増加に加え、販売価格の維持/向上により、売上高は増えた。

MMA&デリバティブズセグメントのコア営業利益増減分析 MMA&デリバティブズのコア営業利益増減分析[クリックで拡大] 出所:三菱ケミカルグループ
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