MONOist 社長就任後はどのような取り組みを進めてきましたか。
竹内氏 日立はモーターを淵源としているが、日立産機システムではより多くの産業機器を取り扱っており、変圧器やポンプ、コンプレッサーなど工場のユーティリティー系と、モーターやそのコントローラー、PLC、インクジェットプリンタなど生産ラインで使われる製品の2つに大きく分かれている。
その中で、日立産機が生産ラインの構築を手掛けるケーイーシーを2019年に買収したが、当社と同じくインダストリーセクターの傘下にあった産業・流通ビジネスユニット(現インダストリアルデジタルビジネスユニット)が主導する形で2019年にロボティクスSI事業を展開する米国のJR Automation(JRオートメーション)を買収している。この2社は、ロボットを中心に生産ラインを構築するロボティクスSI事業という観点で事業内容は同じだ。
ただし、ケーイーシーは国内、JRオートメーションは米国という点ですみ分けはできている。そこで、産業・流通ビジネスユニットの下にケーイーシーを移管して、グローバルでのロボティクスSI事業を強化できる体制を構築することになった。日立産機システムとしては、現在手掛けている中量産の産業機器から“飛び地”になるものには手を出さず、それらの産業機器の中でもグローバルに競争できる製品の展開に集中する方針を打ち出している。
日立産機システムの社内に向けた施策としては、カルチャートランスフォーメーション(企業文化の変革)のプロジェクトを始めた。社内で同じような経験を持った人たちが、同じように決断をしていても何も変わらない。ゴールを設定して、そこに向かってカルチャーを変えていくプロジェクトを行っている。3年目になり、徐々に手応えを感じている。
若手を中心に一緒になって変革を進める“アンバサダー”を選んでおり、これまで変わらなくてはいけないと感じていもなかなか動けなかったベテランにも、そういった若手の姿を見て変化が見え始めた。
価値創造時間という制度も始めた。これは1日30分、上長に許可を得ずに本業以外の自由な目的に使っていい時間だ。1週間分などをまとめてとってもいい。語学の習得に使ってもいいし、業務改善のためのワークフローを作ってもいい。
リフレッシュ金曜日として金曜日の午後に定例会議などを入れない試みをしている。その週の振り返りと、次の週への準備に充ててほしいからだ。
MONOist 2024年には三菱電機から配電用変圧器事業を譲渡されました。今後の事業展望を教えてください。
竹内氏 日立グループとしては日本の送配電分野をまだ強化しなければならない。日立産機システムと日立エナジーが一緒になって取り組んでいくが、われわれは国内に注力していく。ただ、グローバルではAI(人工知能)需要などを背景に、エネルギー消費が増加する。日立エナジーも生産能力を増強するために投資しているが、場合によってはわれわれから日立エナジーに変圧器を供給するケースもあるかもしれない。
世界の電力消費の40%がモーターともいわれているほど、産業用モーターが消費するエネルギーは大きい。われわれのコンプレッサーやポンプにもモーターは使われている。そのため、モーターの効率を上げることで、サステナビリティに貢献できる。引き続き、モーターの効率向上を進めていく。
永久磁石を使用したPM(パーマネントマグネット)モーターなどの新しい技術が登場しているが、それらモーターには全てコントローラーが必要になる。
そのコントローラーをハードウェア主体で設計するのではなく、ソフトウェアによって機能を定義する「ソフトウェアデファインド」にすることで、全て共通のコントローラーで制御できるようにしていく。ネットワーク経由でソフトウェアのアップデートが可能になるOTA(Over The Air)によって今まで以上の価値を提供できるようになる。
このモーターのコントローラーをソフトウェアデファインドにする取り組みは、日立インダストリアルプロダクツが手掛けている建機ドライブシステムのコントロール部分などにも横展開できるのではないかと考えている。
日立グループとして再びプロダクトの重要性に目を向けている。それは、プロダクトがデータを生むからだ。CIセクターでは、データを集めてくる共通のプラットフォームを作っている。全てのプロダクトがつながれば、そこから出てきたデータを使って予兆診断などが可能になる。
プロダクトから集めたデータを基に、日立グループのDSS(デジタルシステム&サービス)セクターと一緒にデジタルテクノロジーを極限まで活用し、顧客にさらに大きな価値を提供していくことが、勝利の方程式になる。
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