グローバル経営強化のため海外拠点にSAP S/4HANA展開 原価管理の精緻化とデータドリブン経営を実現海外複数拠点のERP展開

工業用シール製品や樹脂製品などを展開する株式会社バルカーは、グローバル収益を拡大するため、SAP S/4HANAへのマイグレーションを決断した。海外拠点とのシステム統合を図り、グローバルでの経営基盤の確立を目指す。この支援を行ったのが、株式会社NTTデータ グローバルソリューションズだ。

» 2024年10月10日 10時00分 公開
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 工業用シール製品や樹脂製品などを幅広い産業向けに提供する株式会社バルカーは、グローバル経営基盤の構築と経営のスピード化を実現すべく、SAP S/4HANAへのマイグレーションを決断。株式会社NTTデータ グローバルソリューションズ(以下、NTTデータGSL)の支援のもとマイグレーションを実施し、新たに生産原価モデルを導入しました。さらに海外6カ国9拠点にロールアウトしてグローバル経営基盤を確立し、統制と意思決定を強化しています。

グローバル収益基盤の拡大に向けて 基幹システムの統一を検討

 社名の由来である「Value(価値)」と「Quality(品質)」を基本理念に、シール製品事業と機能樹脂製品事業を展開するバルカー。近年は、長く培ってきた知識やノウハウを生かし、プラントの定期修理工事や検査を省力化するクラウドプラットフォーム「VALQUA SPM(R)」、設備点検プラットフォーム「MONiPLAT(R)」、フッ素樹 脂加工のデジタル調達サービス「Quick Value(R)」などのソリューションを提供することで、社会が求める安心・安全を支え、新たな価値提供を創造しています。

 同社は経営を支える基幹システムとして、2002年からSAP ERPを利用してきました。

株式会社バルカー デジタル戦略本部長 兼 デジタル開発部長 執行役員 川上孝弘 氏 株式会社バルカー デジタル戦略本部長 兼 デジタル開発部長 執行役員 川上孝弘氏 提供:NTTデータGSL

 「当社は基幹システムを、業務運営基盤とデータ基盤の2つに位置付けています。目指す姿はグローバル企業としてバリューチェーン全体を統合し、管理レベルを向上させることです。さらに世界中の出荷・受注・原価データを取得して改善策を議論し、経営のスピード化を実現することにあります」と、デジタル戦略本部長 兼デジタル開発部長 執行役員の川上孝弘氏は語ります。

 同社が基幹システム刷新に乗り出すきっかけとしては、従来システム(SAP ECC 6.0)では、国内のみの導入であったため、今回は経営の見える化・スピード化を目指し海外拠点のシステム統合と製造原価計算の精緻化を図ることにしたと、デジタル戦略本部 IT管理部部長の片野坂隆則氏は語ります。

 「海外のシステムは拠点ごとにバラバラだったため、グループ全体の統制、データ資源の活用に課題がありました。そこでマイグレーションを機にグローバル収益拡大を支える経営基盤の確立を目指しました。製造原価についても、実際原価が品目ごとに把握できていない状況を見直し、正しいデータに基づいた原価管理を行えるようにしようと考えました」

海外展開の実績と提案力を評価し NTTデータGSLをパートナーに採用

 新たな基幹システムには、企業活動を行う上で必要となる機能(モジュール)を備え、1インスタンス(共通システム)で複数法人を管理できるほか、多言語、多通貨、法制度対応を標準で備え、複数国で導入できるパッケージとしてSAP S/4HANAを採用。導入パートナーには、グローバル展開の実績が豊富なNTTデータGSLを選定しました。

株式会社バルカー デジタル戦略本部 IT管理部 部長 片野坂隆則氏 株式会社バルカー デジタル戦略本部 IT管理部 部長 片野坂隆則氏 提供:NTTデータGSL

 「20年以上蓄積してきたSAP ERPのデータを継続して活用していくにはやはりSAP S/4HANAでした。導入パートナーについては複数社に提案を依頼しましたが、NTTデータGSLからはバルカーが抱えるニーズや課題に対して、適切な解決案を提案してもらえました。具体的かつ明確な提案内容からも、グローバル展開の経験が豊富であることが伝わってきました。さらにGSL生産管理アドオンパッケージを利用すれば、各拠点の生産システムとの連携もスムーズに進むと判断しました」(片野坂氏)

 プロジェクトは、国内システムのマイグレーションから開始。システムを先にSAP S/4HANA化し、データを複数回に分けて移行する「BLUEFIELDTM」方式のアプローチを採用し、2019年6月〜2020年4月の11カ月(グローバル展開含めた方針検討3カ月、プロジェクト期間8カ月)で終了しました。BLUEFIELDTM方式により、今後不要となるモジュールのデータは移行対象から外し、移行後のランニングコストを抑えました。

株式会社バルカー デジタル戦略本部 IT管理部 樫村祥汰氏 株式会社バルカー デジタル戦略本部 IT管理部 樫村祥汰氏 提供:NTTデータGSL

 国内導入に続いて、海外は大規模拠点をベースにロールアウトモデルを構築し、2024年5月までに6カ国9拠点へ展開。既存の6拠点とあわせて15拠点のシステム統合が実現しました。海外ロールアウトについて、デジタル戦略本部 IT管理部の樫村祥汰氏は次のように振り返ります。

 「まずは規模が大きくマザー工場がある拠点からスタートしました。そこで作ったグローバルテンプレートが各国展開のベースとなり、同水準のシステムを短期間に構築できました。マスターや業務プロセスが大きく変わってしまう拠点では粘り強く話を聞いたり、説得したりして現地の意見に寄り添い、信頼関係を構築していきました」

既存拠点への導入例 既存拠点への導入例[クリックして拡大] 提供:NTTデータGSL

 一方、国内プロジェクトの後半からコロナ禍が始まったことは、大きな障壁となりました。

 「リモートワーク環境の整備などに追われましたが、何とか国内プロジェクトを終息させて運用を軌道に乗せました。海外展開時も一部のプロジェクトが1カ月ストップしただけです。その後の国々への展開では、IT管理部員を現地駐在させたものの要件定義はリモートで行わざるをえませんでした。それでも小まめにステアリングコミッティのメンバーとコミュニケーションを取り、トップダウンで進めました」(片野坂氏)

 NTTデータGSLは海外拠点へのロールアウト全般を支援し、言語の壁からくる困難やコロナ禍の混乱の解消に協力しました。片野坂氏は「技術力の高いコンサルタントが、プロジェクトを強力に牽引してくれました。海外拠点の担当者への説明や教育についても手厚くサポートいただきました」と評価し、樫村氏も「バルカーの業務を深く理解し、当社の一員のように先頭に立ってリードいただきました」と振り返ります。

グループ基盤の統一により 原価の精緻化と統制の強化を実現

 SAP S/4HANAへのマイグレーションと生産原価モデルの導入およびグローバル展開により、バルカーにおける経営基盤統合は大きく前進しました。グループ全体のデータを参照したいタイミングで確認できるようになり、経営判断のスピード化に貢献しています。

 「正しい品目単位での実際原価が見えるようになったことで、コスト削減や利益につながる経営戦略を迅速に検討できるようになりました」(片野坂氏)

 プラットフォームの統一により、海外拠点の動きも統制可能となりました。

 「海外拠点での誤ったオペレーションや報告資料の間違いが発生した場合でもすぐに情報共有ができ、改善できます。グローバルで業務運用を統一するベースができたので今後はさらなる統制強化を目指します」(樫村氏)

必要な情報をタイムリーに収集し 経営分析の高度化を推進

 グローバルシステム統合によって均一化されたデータを収集して、バルカーの経営判断に必要な情報がタイムリーに見られるようになりました。今後は、BIツールを用いた経営分析の高度化を推進していく考えです。すでに経営陣へのダッシュボード提供などを進めていますが、データの活用を現場レベルに浸透させていくことがこれからの課題です。

 「原価についても管理担当者に対して、BIツールでどういった見せ方が効果的であるかを生産調達の部門と検討している段階で、SAP S/4HANAのデータを経営に直結できるように工夫していきます」(川上氏)

 NTTデータGSLとは現在もコミュニケーションを継続し、SAP S/4HANA未導入の海外拠点のシステム化や、導入済みの拠点で残っている課題の解消といった今後の取り組みについて相談しているといいます。

 「バルカーとしては強固なグローバル経営基盤ができた現在、新しいことにチャレンジできる環境が整ったと考えています。グローバルビジネスの拡大に向けた課題はまだまだ出てきていますので、さらなる取り組みを進めていきます」(川上氏)

導入ポイント

  • 原価計算にNTTデータGSLの生産管理アドオンパッケージを採用
  • ロールアウトモデルを構築し、海外拠点へ段階的にロールアウト
  • グループ統一のプラットフォームを実現し、IT統制を強化

会社概要

株式会社バルカー
設立:1932年4月8日(創業:1927年1月21日)
資本金:約139 億円(2023 年3 月31日現在)
本社所在地:東京都品川区大崎2-1-1
URL:https://www.valqua.co.jp/
事業内容:産業向けファイバー、ふっ素樹脂、高機能ゴム等各種素材製品の設計、製造、加工および販売ならびにインターネットを利用した各種サービスの提供、コンサルティング、エンジニアリング、その他技術・ノウハウに関する事業

会社紹介

 1927年、自動車および高速機械用ブレーキライニングの製造・販売会社として創立。現在は、シール製品事業、機能樹脂製品事業、シリコンウエハーリサイクル事業他の3セグメントで事業を展開しています。2024年4月からは2027年3月期を最終年度とする新中期経営計画「NF2026」を開始。創業100周年に向けて、「Well-being経営」を推進しています。


※本記事はNTTデータGSLが発行した事例集からの転載記事です。
※記載されている企業名および担当者の情報は取材当時のものです。

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