SAP IBPで実現するSCM計画業務の高度化ERPでサプライチェーン管理の高度化を

サプライチェーンマネジメント業務の標準化や高度化を狙う上で、ERPシステムは重要な役割を果たします。しかし、標準機能だけで十分な成果を上げることは難しく、サプライチェーン計画ソリューションと組み合わせたシステム構築が求められます。本稿ではSAP Integrated Business Planning for Supply Chainの導入事例を紹介していきます。

» 2024年03月01日 10時00分 公開
[MONOist]
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はじめに:ERPとSCPソリューションを組み合わせて構築するSCMシステム

 昨今、基幹システム構築を行う際に、SAP S/4HANAに代表されるERPシステム(ERP)を選択することは一般的なオプションとなっています。すでに苦労して導入された企業も多いのではないでしょうか。

 ERPは、製品によってカバーしている業務領域は異なるものの、一般的にロジスティクス・会計・人事といった業務分野をカバーするアプリケーションで構成されています。法制度や会計基準といった各種ルールへの対応が求められる会計・人事領域では、ERPや特定業務専用システムを導入するだけでも一定の成果が出るケースが多い一方、サプライチェーンマネジメントの標準化・高度化・効率化といった導入効果を狙うには、ERPが標準で備えているロジスティクス分野のアプリケーションだけでは不足する場合があります。これは、ERPの主目的が受発注などの実績データの管理であることに起因しています。

 このような場合、ERP上での追加開発で対応することもありますが、販売計画・在庫計画・需給計画といった計画領域をカバーするサプライチェーン計画(SCP)ソリューションと組み合わせたサプライチェーンマネジメント(SCM)システムを構築することが、開発難易度・費用・保守性・システムアーキテクチャの面から考えてもリーズナブルな選択肢となります。

 本稿では、ERPとしてSAP S/4HANAを採用している企業で、SCPソリューションとして活用することが多いSAP Integrated Business Planning for Supply Chain(SAP IBP)の導入事例を通じて、企業におけるSCMシステムや、SCM計画業務を高度化するためのヒントをお届けします。

図-1 計画プロセスとソリューションのマッピング例&本稿での説明スコープ 図-1 計画プロセスとソリューションのマッピング例&本稿での説明スコープ[クリックして拡大] 提供:NTTデータ グローバルソリューションズ

SAP IBPの主な特徴

 SAP IBPは6つのモジュールで構成されており、各モジュールは下図の業務機能をカバーしています。

図-2 SAP IBP構成モジュールと業務機能 図-2 SAP IBP構成モジュールと業務機能[クリックして拡大] 提供:NTTデータ グローバルソリューションズ

 なお、SAP IBPはSaaS形式で提供されており、四半期ごとに自動でバージョンアップが行われることが大きな特長となっています。図2は現時点でのカバー範囲ですが、今後もシナリオの追加や、アプリケーションの追加・改善などが継続して行われます。また、ユーザーの業務生産性に直結するオペレーション画面については、Web画面の他、使い慣れたExcelの表形式を利用することも可能です。その他、モジュール共通で使用できる機能も多く備えています。ご興味のある方はNTTデータ グローバルソリューションズ(NTTデータGSL)までお問い合わせください。

SAP IBPのモジュール使用例

 図2のSAP IBP構成モジュールのうち、一通りの業務機能をカバーできるSales&Operations Planning(S&OP)モジュールを導入し、SAP S/4HANAと連携させることでSCMシステムを構築するケースがよく見られます。加えて、S&OP以外のモジュールを利用することで各業務機能をさらに高度化するケースもあります。

 例えば、S&OPモジュールは基本的に中長期の計画をカバーするための機能で構成されているため、需給計画の際に使用可能な計画エンジンは、輸送能力や生産能力を無限とする「Heuristic(ヒューリスティック)」のみとなります。そのため、中期計画として輸送能力・生産能力を有限とした上で計画を立てる場合、Response & Supply(R&S)モジュールで使用できる、有限負荷計画が可能な計画エンジンを利用する必要があります。

図-3 計画期間別の供給計画エンジンの使用例 図-3 計画期間別の供給計画エンジンの使用例[クリックして拡大] 提供:NTTデータGSL

供給計画エンジンの比較

 SAP IBP導入を検討する企業の多くが、S&OPに加えて、有限負荷計画を行うために、上記のR&Sモジュールの利用も検討しています。ここでは、SAP IBPでの需給計画時に使用可能な供給計画エンジンを比較してみましょう。

図-4 需給計画で使用される計画エンジンの比較 図-4 需給計画で使用される計画エンジンの比較[クリックして拡大] 提供:NTTデータGSL

 図4の通り、有限負荷の供給計画エンジンとしては「有限Heuristic」と「Optimizer」を使用することが可能です。Heuristicも含めて、いずれかのエンジンしか使用できないわけではなく、状況に応じてこれらのエンジンを使い分けていきます。

 また、これらの供給計画エンジンを実行する際には、マスターやパラメータの設定値を考慮することが可能です。一例として、需給計画対象のロケーション(工場や物流センターなど)と品目の組み合わせを事前にグルーピングしておくことにより、そのグループ単位で需給計画を立案できる機能があります(サブネットワーク機能)。この機能により、各販社用のサブネットワークで立案した需給計画を本社工場に連携し、本社工場でも独自のサブネットワークで需給計画を立案する、といった多拠点・多階層のPSI管理が可能となります。

 その他、特定のバケットに生産数が偏らないように平準化をする、残業などの追加コストで輸送能力や生産能力を拡張する、確定期間内に入った計画を自動変更対象外とするといった、比較的よくある要件に対しても各種設定のみで対応可能です。

柔軟なFit to Standardで導入するSAP IBP

 上記でご紹介したのは、SAP IBPのごく一部の機能です。SAP IBPはSaaS製品でありながら、標準機能内で幅広いSCM計画業務に対応し、マスター設定やパラメータ設定によって柔軟に業務要件への対応が可能であることをご理解いただけたでしょうか。

 昨今の基幹システムはFit to Standardを導入方針とするケースが多く、SAP IBPについてもベストプラクティスとして提供されるオブジェクトを活用しながら、Fit to Standardのポリシーを堅持することが導入成功の鍵となります。しかしながら、供給計画エンジンの例で見たように、追加開発を行わずとも要件に対応できるよう、マスター項目やパラメータ値が多く用意されています。また、BIシステムの構築時と同じように、SAP IBPでは計画の切り口(ディメンション)や数値項目(ファクト)を独自に定義できるため、企業はそれぞれ独自に項目を設けて計画立案を行うことが可能です。

 それ以外にも、CI-DSという標準のETLツールにより、標準項目・独自追加ともに外部システムとSAP IBP間のインタフェース開発を簡易的に行えるようになっています。特に、SAP S/4HANAとの連携については標準シナリオが用意されているため、開発を行うことなく、標準機能をそのまま利用することが可能です。

 このようにSaaS製品でありながら、柔軟にさまざまな業務要件に対応できるSAP IBPの導入によって、早期にSCMシステムの導入効果を獲得できます。

おわりに

 NTTデータGSLでは、今回ご紹介したSAP IBPの単独の導入だけでなく、SAP S/4HANAをコアとして、他の製品も含めたシステムアーキテクチャ全体の最適化を行うためのコンサルティングや導入も行っています。

 本稿が、皆さまのサプライチェーンに関わる課題解決の糸口になれば幸いです。

※本記事は、NTTデータ グローバルソリューションズより提供された記事を許諾を得て再構成したものです。



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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2024年3月28日