東京工業大学は、窒化物強誘電体のスカンジウムアルミニウム窒化物の薄膜が、600℃までの水素含有ガス中の熱処理後も強誘電性が劣化しないことを発見した。
東京工業大学は2024年7月22日、窒化物強誘電体のスカンジウムアルミニウム窒化物((Al,Sc)N)の薄膜が、600℃までの水素含有ガス中の熱処理後も強誘電性が劣化しないことを発見したと発表した。キヤノンアネルバ、高輝度光科学研究センターとの共同研究による成果だ。
半導体の製造プロセスでは、水素含有ガスの雰囲気での熱処理が不可欠だ。しかしその際に材料が劣化するため、それを防ぐ保護膜の作製が必要となる。今回の研究では、酸素を含まない窒化物強誘電性体の(Al,Sc)Nに着目。水素含有ガス雰囲気下で(Al,Sc)Nを熱処理し、処理前との強誘電性(自発分極値)の変化を測定した。
従来のペロブスカイト構造に代表される複合酸化物強誘電体と、酸化ハフニウム系強誘電体、窒化物強誘電体の強誘電特性を比較したところ、複合酸化物強誘電体(Pb(Zr,Ti)O3やSrBi2TaO7)や酸化ハフニウム(HfO2)系強誘電体では、強誘電性の劣化が見られた。一方、窒化物強誘電体の(Al,Sc)Nは、600℃までの処理温度ではほぼ劣化していなかった。つまり(Al,Sc)Nは、水素含有ガス対策用の保護膜を必要としないことが明らかとなった。
また(Al,Sc)Nは、20万分の1mm(5nm)まで薄膜化しても、強誘電性が劣化しないことが確認されている。さらに、2011年に発見されてから研究の主流となっている酸化ハフニウム系強誘電体の5倍以上のデータ保持能力(残留分極値)を有するため、製造プロセスを簡素化しつつ、高集積化したメモリの作成が期待できる。
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