水素を基幹エネルギーの1つに、JR東の高輪ゲートウェイの街づくり脱炭素(2/2 ページ)

» 2024年07月31日 13時30分 公開
[齊藤由希MONOist]
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1日のトラック流入を1000台減らす

 高輪ゲートウェイシティーで水素活用を推進する一環で区域内の物流向けに燃料電池車(FCV)を導入するとともに、「集約型館内キャリーシステム」によって輸送の効率化も推進する。

 区域内への納入で周辺道路や駐車場が混雑することを回避するため、平和島(大田区)に整備した小型物流拠点(外部デポ)に高輪ゲートウェイシティー宛ての荷物を集約する(外部デポは2024年6月に開設)。配達の時間指定などに合わせてジェイアール東日本物流の燃料電池(FC)トラックが平和島から高輪ゲートウェイシティーまで荷物を運ぶ。FCトラックから降ろした後は、配送員が届け先まで運ぶ。

集約型館内キャリーシステムのイメージ[クリックで拡大] 出所:ジェイアール東日本物流

 外部デポでは冷蔵や冷凍などの温度管理も行う。店舗など向けの配送は外部デポに集約するが、フードデリバリーは対応が難しい。高級住宅の居住者向けの荷物の集約は今後の検討課題だという。

 従来は納入のトラックの混雑や配送用エレベーターの待ち時間が長いことなどで時間指定に対する配達の遅れが目立っていたが、外部デポから高輪ゲートウェイシティーまで小数のトラックが輸送することで区域内への車両流入台数が減少し、時間通りに配達しやすくなる。納品のためのトラックの流入台数は1日に1000台ほど削減できる試算だという。

 高輪ゲートウェイシティーの区域内だけでなく、高輪ゲートウェイシティー宛ての荷物を扱う物流事業者にも効率化になり、CO2排出削減につながるとしている。FCトラックの導入台数は現時点では小型トラックサイズが2台のみ。トラックの台数拡大や外部デポの増設は、荷物の取り扱いの増加を踏まえて検討していく。

 これまではトラックのドライバーが荷物を運ぶため、いつも同じドライバーが同じ届け先に行くとは限らなかった。集約型館内キャリーシステムでは、FCトラックから降ろした後の荷物を固定の配送員のメンバーで届けるため“物流のコミュニティー”が形成されるとジェイアール東日本物流は期待を寄せる。決まったメンバーがラストワンマイルを担うことで、物流の定性的なデータも集めやすくなると見込んでいる。

 高輪ゲートウェイシティーの最南端ではENEOSの水素ステーションが営業している。外部デポから高輪ゲートウェイシティー向けの荷物を運ぶFCトラックが水素を補給できる。

外部デポから高輪ゲートウェイシティーへの輸送は燃料電池トラックで行う[クリックで拡大]

ビル単体ではなく区域内全体で

 高輪ゲートウェイシティーは、断熱や高効率機器、廃熱活用などの「省エネ」、風力や太陽光の発電、バイオガス活用などの「創エネ」、蓄熱槽を活用したエネルギーマネジメント、水素利活用といったさまざまなエネルギー施策により、同規模の都市開発で何も対策をしなかった場合に比べて65%のCO2排出削減を達成できるとしている。また、区域内で使用するエネルギーの6割程度をエネルギー施策で確保する。

 ビル群の地下には電気や熱、通信のインフラが張り巡らされており、区域内全体のエネルギーマネジメントを実現する。非常用発電機など特別高圧電気設備は水没リスクを回避するため地上より上に設置するなど、災害にも備えている。ビル単体の責任分界点で区切ることなく、高輪ゲートウェイシティーの区域全体を管理する。

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