二輪車のMT操作を自動化する「Y-AMT」、ヤマ発が「MT-09」で採用安全システム

ヤマハ発動機は自動変速機構「Y-AMT」を開発した。2024年内に発売予定の「MT-09 Y-AMT」に搭載する。

» 2024年07月29日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 ヤマハ発動機は2024年7月26日、自動変速機構「Y-AMT」を開発したと発表した。2024年内に発売予定の「MT-09 Y-AMT」に搭載する。

 Y-AMTはクラッチレバーとシフトペダルをなくした新開発の自動変速機だ。2006年に開発した二輪車用自動MT「YCC-S」を発展させ、より高いスポーツ性と利便性を両立させた。シフト操作を手元のレバーに集約することで、より直感的なギアチェンジを可能にするという。クラッチやシフトペダルの操作から解放しながら、二輪車を操る楽しさや人機一体感の向上につなげる。

2024年内に発売するMT-09 Y-AMT[クリックで拡大] 出所:ヤマハ発動機

 Y-AMTには、ハンドシフトによるMTモードと、変速を自動化するATモードを備える。MTモードでは、アクセルを開けたままシフトレバーを操作するだけで、エンジン性能を生かした加速が得られるとしている。変速ショック抑制によりコーナリング中の安定感が向上し、シフトペダル操作が不要になることで下半身でのホールド感も増す。ライディングポジションの自由度向上にも貢献するという。

 ATモードでは車速やアクセル開度に応じて自動的に最適なギアが選択されるため、ライダーはアクセルとブレーキの操作のみを行う。頻繁なギアチェンジが必要だった市街地での走行や、ロングツーリングなどでの負担を軽減する。

 街中や高速道路、ワインディングロードなど道路環境の違い、ライダーのコンディションや天候の変化などに合わせて、手元の切り替えボタンでモードを選択できる。いずれのモードも素早いレスポンスが特徴で、エキスパートレベルの変速を安定して実現するとしている。

左ハンドルのシフトレバー(左)。右ハンドルの切り替えボタン(右)[クリックで拡大] 出所:ヤマハ発動機

 Y-AMTは、従来の左手によるクラッチ操作と左足によるシフト操作をアクチュエーターが担い、ギアチェンジを自動化する。アクチュエーターのユニット重量は約2.8kgと軽量かつコンパクトな設計とし、ベース車両のスタイリングやハンドリングへの影響を最小限にした。また、ベースとなるMT車の変速機構に大きな変更は加えないため、MT車らしいダイレクトな変速フィーリングなどは引き継げるという。

 ギアチェンジではECU(エンジンコントロールユニット)とMCU(モーターコントロールユニット)が連携する。ECUはシフトアップ時のエンジンの点火や噴射、シフトダウン時の電子制御スロットルなどをコントロールする。MCUは最適なシフト操作とクラッチ操作をアクチュエーターに指示する。

 高回転時にはクラッチを完全に切らずに状況に応じた最適な制御を行う。シフトロッド内へのスプリング挿入による変速時間の短縮、エンジン制御とクラッチ制御の協調などにより、素早いギアチェンジと変速ショックの低減を両立。ライダーの意思に沿った自然な変速フィーリングを実現したという。

Y-AMT搭載レイアウト。左がシフトアクチュエーターで右がクラッチアクチュエーター(左)。スプリング内蔵シフトロッド断面図(右)[クリックで拡大] 出所:ヤマハ発動機

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