前述の3カ国合同ワークショプで、デジタルヘルスに続き議論されているのが、分散型臨床試験だ。FDAのプレゼンテーションでは、最初に「分散型(Decentralized)」と「ポイントオブケア/実用的」(Point of Care (POC)/Pragmatic)というキーワードを示している(関連情報)。
FDAは、分散型要素に関しては、以下のような特徴点を挙げている。
また、ポイントオブケア/実用的に関しては、以下のような特徴点を挙げている。
その上で、分散型要素とポイントオブケア要素を組合せた手法について、以下のような方向性を例示している。
ここで図2(伝統的な臨床試験プロセスとGCP査察)と図3(分散型要素を備えた臨床試験のGCP査察)は、FDAの説明資料より、伝統的な臨床試験と分散型臨床試験におけるGCP査察の関係を示したものである。
FDAによると、従来型と比較して分散型臨床試験には、以下のような利点があるという。
FDAは、分散型臨床試験に対するGCP査察に関連して、臨床試験依頼者は、分散型要素に関連する記録や元資料が置かれ、アクセス可能な場所、そしてFDAの査察目的で臨床試験実施責任者およびその他の臨床試験要員に対するインタビューができるような場所を提供すべきだとしている。また、適用規制の下で、臨床試験監査に必要な情報に対して、FDAの査察官がアクセス可能なようにすべきだとしている。
参考までにFDAは、2023年5月1日、「医薬品、生物由来製品、機器向け分散型臨床試験 - 業界、臨床試験実施責任者およびその他のステークホルダー向けガイダンス草案」を公表している(関連情報)。
このガイダンス草案では、分散型臨床試験(DCT)について、試験関連の活動の一部または全てが、伝統的な臨床試験サイト以外の場所で行われるような臨床試験と定義している。DCTの場合、臨床試験関連の活動は、試験参加者の自宅や、試験参加者に便利な地域医療施設で行われる可能性がある。加えてハイブリッド型DCTの場合、伝統的な臨床試験サイトで試験参加者が対面診療を受ける一方、その他の活動については、患者の自宅など、臨床試験サイト以外の場で行われる可能性があるとしている。具体的には、以下のような構成になっている。
日本でも、分散型臨床試験に対する期待が高まっているが、デジタルのメリットを生かしたGCP査察業務の働き方改革まで踏み込んだ議論は、あまり見受けられない。AI医療機器のような新技術の導入に合わせて、従来の人海戦術と紙文書に依存した仕組みを変革することが求められている。
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