米国、カナダ、英国の規制当局間の連携活動は、AI医療機器だけでなく、コロナ禍におけるデジタル化/遠隔化を起点とした規制監督業務の働き方改革に広がりつつある。例えば、米国FDA、英国MHRA、カナダ保健省は共同で、2024年2月13日〜15日、「グッド・クリニカル・プラクティス(GCP)&医薬品安全性監視コンプライアンスシンポジウム」を開催している(関連情報)。
このシンポジウムは、以下のようなアジェンダになっている。
今回は、米国FDAからの発信情報に焦点を当てて、コロナ禍を起点としたGCP査察を巡る働き方改革の動向をみていく。
このシンポジウムでは、本連載で度々取り上げてきたデジタルヘルスがテーマの一つになっている(関連情報)。ここでは、デジタルヘルスについて、臨床試験の一部として捕捉・報告される電子データのデータライフサイクルの中のあらゆる地点で有効活用されるような機器、ツールまたはプラットフォームと定義している。これには、電子データの収集、管理、転送、保存または報告に使用されるコンピュータシステム、ソフトウェアアプリケーション、入力センサー/機器のほか、遠隔データ収集ツール(例:患者報告アウトカム(ePRO)機器/ソフトウェア)が含まれる。
FDAは、デジタルヘルス技術に関する査察のケーススタディーとして、新規化合物におけるePROの事例を報告している。遠隔ePROデータ収集の採用によって、「ALCOA+の原則」(帰属性、判読性、同時性、原本性、正確性、完全性、一貫性、耐用性、可用性)に基づくデータインテグリティ上のメリットを享受できる反面、査察上、新たな課題も見受けられたという。
FDAによる査察の結果、アクセス制御に関連して、設定された暗証番号(PIN)が共通になっているケースや、参加者の誕生日になっているケース、セキュリティに関する質問と回答のパターンが類似しているケースなど、ePROのエンドポイントの有効性データに異常なパターンが見受けられた。本ケーススタディーでは、このような状況が見受けられた場合の査察結果について、以下のような課題を例示している。
これに対してFDAは、以下のような課題解決案を例示している。
参考までにFDAは、遠隔データ収集目的のデジタルヘルス技術に関連して、2023年12月20日、「臨床試験における遠隔データ収集向けのデジタルヘルス技術 - 業界、臨床試験実施責任者およびその他のステークホルダー向けガイダンス」を公表している(関連情報)。このガイダンスは、医療製品を評価する臨床試験において、参加者から遠隔によるデータ収集を行うデジタルヘルス技術(DHT)利用に関して、臨床試験の依頼者(Sponsor)や実施責任者(Investigator)およびその他のステークホルダーに対する推奨事項を提供することを目的としており、以下のような構成になっている。
デジタルヘルス関連企業は、デジタルヘルスを利用した臨床試験に関わるGCP査察についても、各国規制当局間のハーモナイゼーション動向を注視する必要がある。
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