機械設計に携わるようになってから30年超、3D CADとの付き合いも20年以上になる筆者が、毎回さまざまな切り口で「3D設計の未来」に関する話題をコラム形式で発信する。第11回は「『誰もが熟練設計者と同じように設計できる』ための標準化」をテーマに取り上げる。
今回は「『誰もが熟練設計者と同じように設計できる』ための標準化」についてお話します。
筆者は「設計は創造する仕事」だと考えています。“熟練設計者の設計フローを標準化する”ために、ガチガチのドキュメントを整備するといったお話を聞くことがありますが、これでは設計手順やルールに縛られてしまい、創造的な仕事はできそうもありません。
では、創造性を損なわずに、熟練設計者と同じように設計を行うにはどうすればよいのでしょうか。まずは、設計経験豊かな熟練設計者の優れた部分とは何か? について「技能」と「技術」の視点で考えてみることにします。
そもそも、技能と技術の違いは何でしょうか? 筆者の見解としては、技能は“腕前”のことを示しており、腕前とは“技量”ともいえます。“能”と付くように「どれだけうまくやれるのか」という“能力”のことを指していると理解しています。英語でいえば「Skill(スキル)」ですね。
一方、技術とは「あることを行う手段や方法、道具や技を持っている」ことを意味しており、そこには“知識”が大きく影響すると考えます。英語でいえば「Technic(テクニック)」です。
例えば、
AさんはCADを使う技能がある
BさんはCADを使って高度な設計をする技術がある
といえば、分かりやすいでしょうか。一見すると同じように感じる語句ですが、技能は実践力を示し、技術は知識や理論に基づく対応力を示しているといえるのではないでしょうか。
設計者の技能とは、設計者が業務を遂行するために必要な実践的な能力やその熟練度のことだといえます。例えば、以下のような内容です。
これらのスキルを磨くことで、設計者はより高度な設計ができるようになります。
設計者の技術とは、設計プロセスを効果的に進めること、優れた製品を作り出すために必要な工学的原理原則を理解していること、設計プロセス改善のための具体的な方法や手法を活用できることだといえます。
これらの科学的知識と工学的原理による技術を身に付けることで、設計者はより高度な設計ができるようになります。
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