NEO新城工場の立ち上げと同時にスマートファクトリーを実現、OSG流の大胆なDX推進工場見学レポート〜ものづくり最前線〜(2/4 ページ)

» 2024年06月24日 07時00分 公開
[Koto Online編集部Koto Online]
Koto Online

納期を守る手段としてのデジタル化

田口 もっとも重要な納期を守る手段として、デジタル技術の導入があるわけですね。

桝田 その通りです。具体的にはMicrosoftのBIツール「Power BI」を導入し、自社でモノづくりを見える化するアプリを作り、QCDを管理。中期経営計画で掲げたROAの拡大を実現するため、初回回答納期順守率などを順守する仕組みを構築しました。

田口 初回回答納期率95%は、かなりの高水準ですね。

桝田 他にも原価率や欠品率なども可視化し、最終的に会社の利益拡大に貢献しましょうということで、工場側でKPIを定めています。

田口 経営上で重要な数値となりますが、誰が決めているのですか。

桝田 工場サイドです。毎月押さえないといけない指標があり、それらを管理するページを作っていった結果全てがつながっていきました。そして、これらの数字は経営層を交えた月次開催の会議の場などで報告しますし、権限を付与された社員であればいつでも閲覧することが可能です。問題点は何でいつまでに解決するのか、予定通り正しく解決されたかのか、について答え合わせもできます。

田口 バランスト・スコアカードのように見えますが、アメリカでも事業を指標ベースで管理されていたのでしょうか。

桝田 はい。もちろん会社としてのスコアカードの管理はされていました。例えば営業系の方々は個人別の四半期の売上目標、新製品売上目標、顧客アカウント数の管理をしており、製造系はNEO新城工場と同様に製造原価、稼働率、欠品率などさまざまな製造指標について管理を行っていましたが、私が駐在していた当時はまだExcelベースがほとんどでした。

「現場をマネジメントしていた経験や感性が生かされていると感じました。工場だけを見ているとあのようにならないと思います」(コアコンセプト・テクノロジー 田口氏)[クリックで拡大]出所:Koto Online

現場力を支えるデジタル化がキーワード

田口 ここからは、NEO新城工場について、さらに掘り下げてご解説ください。

桝田 NEO新城工場は多品種少量生産の工場です。当社はカタログ品と、お客さまのニーズに合わせた特殊品の両方を手掛けています。特殊品はお客さまのアプリケーションに最適化した仕様になっており、形状も複雑でなかなか作り難いものが多いですが、痒いところに手が届く総合工具メーカーになることで、お客さまに継続して選んでいただける存在になりたいと思っています。

 例えば海外にも製造拠点を持つお客さまの場合ですと、新しいラインを作るためのテストを日本で実施され、初回の手配は5本納品と少量であったとしても、うまくいくと国内の量産ラインで使われるようになり、次は海外の工場に横展開され、結果的に膨大な数になります。スペックインするので、他のメーカーに目移りされることもほぼありません。当社の工具がないと生産が成り立たないというのが、目指すべきところです。

田口 そこまで行くと、10年以上は使い続けられるわけですね。

桝田 ですから、オーエスジーは特殊品も喜んで引き受けるスタイルを貫いています。規格品だけ作っていると楽ですが、他社ではなかなか作れない600mmの長いドリルなど、難しい製品にも愚直に取り組むのがOSGの文化でもあり、そこから学んだことが将来の新製品の作り込みや製作可能範囲拡大につながる効果もあります。

 NEO新城工場は生産体制の刷新などが課題で、ロボットなどの技術を使いながらも、現場力を支えるデジタル化がキーワードでした。実際に行っているのは、徹底した加工の見える化です。加工機ごとの稼働率、生産スケジュール、生産状況などの情報を共有し、収集したデータを分析。生産の無駄を徹底的に省き、状況に応じた最適な組み入れを行うことで、標準品・特殊品ともにリードタイムの短縮を目指しました。

 他にも、複合加工機においては能力を最大限に生かす多品種少量生産の実現、スマートエリアでは稼働率を最大化するためエリア内のセッティングルームでスケジュールに従い外段取りを行っています。事前に段取りをすることで、加工する機械にオペレーターが関わる時間を最小限にすることができ、ここでは外段取り部隊と機械段取り部隊とでグループを2つに分け、72時間連続稼働でさまざまな製品を昼夜問わず作っています。

「1種類だけ週末に1000本作るのは誰にでもできますが、3種類の違うものを週末に連続で作ることに、われわれは取り組んでいます」(オーエスジー 桝田氏)[クリックで拡大]出所:Koto Online

田口 標準品に少し手を入れた、いうなれば標準品と特注品の間の製品は、どちらに分類されますか。

桝田 特注品として取り扱っています。標準品は材料のストックがありますのでそれを流用すれば短納期で作ることが可能です。ですから営業には、特注品を受注する際にできればお客さまと話し合って標準品の材料を使えるものにしてくださいとお願いすることで、製造リードタイムの短縮だけでなく価格も安く提供することが可能となり、他社から切替の受注につながる可能性を広げられます。

田口 確かにそうですね。

桝田 仮にお客さまが全長95mmの形状を希望された場合、材料在庫がある100mmで製作させていただけないかという交渉ができるかどうかです。最終的にわれわれは、そういうところに持っていきたいと考えています。

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