トヨタ自動車は低排気量の直列4気筒エンジンを新開発する。電動ユニットと組み合わせてさらなる効率化と小型化を目指す。モーターとエンジンのそれぞれが得意な領域を生かしてこれまで以上に高い効率を実現していく。電動化を前提とすることでエンジンの合理化を図り、搭載の自由度を高める。
バイオ燃料やe-fuelなど燃料の多様化にも対応し、カーボンニュートラル燃料の普及に貢献したい考えだ。カーボンニュートラル燃料の普及には、燃料の使用量拡大が重要だとしている。
「直列4気筒は長い歴史の中で鍛えられ続けてきた」(トヨタ自動車の佐藤氏)。構造がシンプルで搭載自由度が高く、ファミリーカーからスポーツカーまで多様な商品ラインアップを支えてきたことを踏まえ、新開発のエンジンも同様に育てていく方針を示した。
トヨタ自動車 CTOの中嶋裕樹氏は将来的に電気と水素がエネルギーの中心となり、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)、水素エンジン車が主流になっていくと見込む。ただ、各国のエネルギー事情を考慮するとPHEVやHEV(ハイブリッド車)がまだ重要だとしている。「私の場合、通勤で往復80kmを走るので、EV走行距離が50〜70kmの今のPHEVではEVとして使うことができない。バッテリーを大きくして、200km程度のEV走行距離のPHEVになれば、ほとんどの日常生活をEVとして使える。遠出するときには一部エンジンを使い、ロングレンジでも走ることができる。これはプラクティカルなEVと呼んでいいのではないかと考えている」(トヨタ自動車の中嶋氏)
排気量1.5l(リットル)の新開発のエンジンは、既存の同排気量のエンジンと比べて体積や高さを10%低減する。また、3気筒から4気筒にすることで低ストローク化を実現し、エンジン自体の小型化を図る。欧米が今後導入する厳しい排ガス規制にも、出力を落とさずに適合させるという。エンジンの効率化と、エンジンの小型化による低フード化での空力性能の向上で、燃費を12%程度改善する目標だ。
排気量1.5l(リットル)の新開発のエンジンはターボチャージャーと組み合わせることで、北米で需要のある3列シートの大型SUVやトーイング(けん引)に対応する排気量2.5lのエンジンと比べて同等の出力を発揮しながら、20%の小型化と15%の全高低減を実現するという。
排気量2.0l(リットル)の新開発のエンジンは、排気量2.4lの既存の過給エンジンと比べて10%の小型化と低ストローク化による10%の全高低減を図る。排気量2.4lの既存の過給エンジンよりも出力を大幅に向上させながら、厳しい排ガス規制の元でも高出力を確保する。ピックアップトラックなどの大型乗用車への搭載を予定している。改良を加えればスポーツカーにも搭載できるという。
TNGAでは出力と燃費を両立するためにエンジンをロングストローク化してきたが、今回の発表では電動ユニットとの組み合わせを前提に低ストローク化を進める格好だ。モータースポーツ活動の中で、ショートストロークのエンジンでも燃費と出力を改善できる手応えを得たことも影響した。
これらのエンジンを電動車に搭載し、モーターと組み合わせると、さらにパワーを発揮することができる。「電気とエンジンの足し算で最終的なパワーを決めればいいので、モーターの出力を上げればエンジンの仕事を少なくして機構や構造を簡素化でき、エンジンの回転数を下げることが低ストローク化にもつながる。排ガスの触媒も使用する貴金属を減らせる。ある程度クルマが暖まってからエンジンをかけたり、高速道路のように加減速の少ない場面でエンジンの効率のいいところを使ったりすることでも燃費効率を高められる。エンジンに必要なコストを下げることで、電池のコストを上げることもできる。エンジンと電気の割合が2対8なのか、5対5なのか、このあたりのバランスをとることができるPHEVは、ユーザーにとってアフォーダブルで、地域のエネルギー事情に合わせたCO2排出低減も実現できるのではないか」(トヨタ自動車の中嶋氏)
エンジンの小型化はデザインにも大きく貢献する「これまで、エンジンがあるとフードを下げるのは難しく、それがEVとエンジン車の違いになると考えていた。これだけ小さなエンジンで出力も燃費も改善できれば、EVのようなスタイリッシュなクルマをエンジン搭載車でも作ることが可能になる」(トヨタ自動車の中嶋氏)
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