空質空調事業については、重点強化を進めてきた欧州向けのヒートポンプ式温水給湯暖房機(Air to Water、以下A2W)事業が、ガス価格の高騰が落ち着いた点、各国の補助金が終了した点などの影響で市場全体が低迷している。そのため、期待通りの成長は実現できていない状況だ。しかし、2030年にかけて中長期では成長する見込みで、需要拡大に備え、競争力強化を着実に進めていく方針である。
具体的には、これらのA2W製品を据え付けるインストーラーとの関係強化を進めていく。シェア強化地域であるドイツやフランスで、エネルギープロバイダーやユーティリティー企業と協業し販路拡大に取り組む。加えて、これらのインストーラーの業務効率向上のため、故障の予兆検知サービスなどを提供する他、ローン販売スキームやサブスクリプションモデルなども展開する。
さらに、商品力強化として、小型モデルの提供や、A2W、室内機、全熱交換器の統合制御をINNOVAとの協業で推進する。加えて、ドイツのエネルギー制御ソリューション会社tado°との連携でスマートサーモスタットによる制御なども新たな付加価値として提案していく。「インストーラーに選んでもらえるような価値訴求を行い、着実なシェア拡大を目指す」(楠見氏)。
SCMソフトウェア事業については、Blue Yonderに戦略投資として3年間で累計2億米ドルをかけながら、事業基盤の強化を着実に進行し、新たなSCMプラットフォームとしての定着を進めていく。2023年12月には、ネイティブSaaSプロダクトの第一弾をリリースし、これらの製品のよる価値を訴えていく。加えて、顧客接点強化を進めるため、Snowflake、アクセンチュアとの協業を開始した他、フロントラインの営業人員を50%増員する。
商品力強化については、さらにM&Aを推進しており、新たに返品管理系のDoddle、計画系のFlexisを買収し、SCMプラットフォームとしてポートフォリオ拡充を進めている。パナソニックグループが持つ現場ソリューションとSCMを連携した、グループシナジーについても徐々に成果が生まれ始めている。パナソニック コネクトとBlue Yonderで共同開発した「輸送トラックヤード管理ソリューション」を米国Penske Logisticsに導入した。また、ラピュタロボティクスと協業で倉庫内ロボティクス化について、Blue Yonderソリューションとの連携を進めている。
さらに、2024年3月に買収を発表した米国One Network Enterprisesとのシナジー効果創出に取り組む。Blue Yonderによる高精度なサプライチェーン最適化技術と、One Network Enterprisesの情報共有プラットフォームを融合し、この情報共有プラットフォーム上で、複数企業のサプライチェーン情報の共同活用を行い、多企業間での最適化を実現することを目指す。リアルタイムでマルチティア連携が可能なSCMプラットフォームベンダーとして差別化を図る。3000社の顧客基盤を持つBlue Yonderの販路を用い、情報共有プラットフォームサービスの拡張を進めていく。
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