バイオ燃料や水素、合成燃料の市場規模は2050年に236兆円脱炭素(2/2 ページ)

» 2024年05月10日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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グリーン水素に対する各国の動き

 グリーン水素は、再生可能エネルギー由来の電力を利用した水の電気分解から得られる。米国では、2023年10月に「インフラ投資雇用法」で複数の水素ハブが資金提供の対象となり、これらの水素ハブでブルー水素とグリーン水素が年間300万トン以上生産される見通しだ。2030年に年間1000万トン、2050年には年間5000万トンの水素生産を目指している。生産能力拡大を目指すとともに、輸出も計画している。

 欧州は「REPowerEU」の中で、2030年までにEU域内でのグリーン水素製造と輸入をそれぞれ1000万トンとすることを掲げている。2023年11月には、EU域内でのグリーン水素生産のための財政支援や、グリーン水素製造支援と普及のため欧州水素銀行の第1回競争入札が行われた。

 世界最大の水素需要国である中国では、2060年のカーボンニュートラル達成を目指し、グリーン水素産業の整備に取り組んでいる。

 豪州では、2023〜2024年度予算において大規模グリーン水素生産プロジェクトに対し、生産コストと販売価格の値差をクレジットとして支援している。

 日本では2020年代は実証フェーズであるが、「水素基本戦略」において2030年代に年間42万トン以上のクリーン水素供給を目標に掲げ、徐々に商用化フェーズに移行するとみられる。しかし、2030年代はブルー水素が先行し、グリーン水素は低調に推移すると予想される。2040年以降は発電分野での利用が本格化するとともに、鉄鋼を含むあらゆる産業分野で利活用されることにより、生産量が拡大して価格競争力が強まり、ブルー水素を上回る需要を生むことが期待される。

合成メタンに対する各国の動き

 e-メタンは、グリーン水素と、火力発電所や産業施設などから排出されるCO2を合成することによって製造され、製造プロセスはメタネーションと呼ばれる。

 欧州ではドイツやフランスなどでメタネーションプラントが設置されている。中国は石油化学工業由来の副生CO2や水素などの利用などを含むメタネーション事業が計画されている。米国や豪州、UAEなど、再エネ電力が安価な地域はグリーン水素製造の適地として想定されており、e-メタン製造についても産業形成が予想される。日本では、2030年にガス全体における1%以上、2050年に90%以上のe-メタンの導入目標が掲げられており、2040年以降で量産フェーズに移行する見通しだ。

合成燃料に対する各国の動き

 e-Fuelは、グリーン水素とCO2を原料とした合成ガスから、FT(Fischer-Tropsch)合成により製造される液体燃料だ。液体燃料のうち、ガソリン留分、灯油(ジェット燃料)留分、軽油留分をそれぞれ分留、精製することでそれぞれの化石由来燃料をそのまま代替することができる。

 欧州では、水素のパイプライン整備が想定されるドイツや、豊富な水力発電容量を有する北欧エリアなどでe-Fuelの生産が進んでいる。2023年10月にEU域内の空港を対象にSAFやe-Fuelの使用率に関する法規制が定められたことが市場拡大に大きく寄与する。また、欧州では2035年以降、エンジンを搭載した自動車の販売禁止が掲げられているが、e-Fuelの使用を前提に販売が許可されている。トラックやバス、建設機械などでエンジンを搭載した車両は販売が認められており、e-Fuelのディーゼル留分の需要形成も見込まれる。

 EUのようにe-Fuelの使用が義務付けられている地域は現状では限定的だが、SAFの使用義務化は日本などでも設定され始めている。中長期的には、SAF使用義務化によって需要が大きく増加するが、原料確保などの観点からバイオジェット燃料の供給量に限界があり、化学的に大量の合成が可能なe-Fuelの需要が喚起されるという。

 日本では、経済産業省の「グリーン成長戦略」において2050年までの合成燃料のロードマップが示されており、国内の事業者も技術開発や実証事業を進めている。2030年に向けては、SAFの使用率10%が目標とされており、e-Fuelについても一定の需要が発生するとみられる。当面は航空機向けが中心だが、商用車や建築機械などのディーゼル燃料の代替としても需要拡大が予想されるという。

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