本連載では応援購入サービス(購入型クラウドファンディングサービス)「Makuake」で注目を集めるプロジェクトを取り上げて、新製品の企画から開発、販売に必要なエッセンスをお伝えする。第3回はWILLTEXの「WILLCOOK PACKABLE」を取り上げる。
市場環境が変わる中、B2B事業で培った技術を生かして新たにB2C製品を作るモノづくり企業が増えている。大きなチャンスだが、今までと異なる機軸で新製品を作る上では大変な苦労もあるだろう。本連載では応援購入サービス(購入型クラウドファンディングサービス)「Makuake」のプロジェクトをピックアップし、B2C製品の企画から開発、販売に至るまでのストーリーをお伝えしたい。
米国のラスベガスで開催される、世界最大のテクノロジー見本市「CES(Consumer Electronics Show)」。大企業はもちろん企業規模を問わず幅広い業種が集結する、1年のトレンドを占う上でも注目度の高いイベントだ。
その「CES2024」(2024年1月8〜12日に開催)で、繊維製品の製造を手掛ける日本のスタートアップが、最高位にあたる「ベスト・オブ・イノベーションアワード」を家電分野で受賞した。2018年に創業した、神奈川県横浜市に本社を置くWILLTEX(ウィルテックス)だ。
受賞対象の製品は、ポータブルレンジバック「WILLCOOK」である。最大の特徴は、“布が発熱する”ことで内部を加熱、保温する機構を実現した点だ。WILLTEXは、三機コンシスが特許を持つ、繊維を一本一本発熱させる布製ヒーター「HOTOPIA(FABRINICS)」のライセンス契約を結んでいる。これを基に、製品の企画/開発、販売を行っている。
WILLTEXはB2B向けにワーキングウェアなどを開発していたが、2022年からは自社ブランドとして、軽くて持ち運べるカバン型のポータブルレンジバッグWILLCOOKブランドをB2C製品として展開してきた。
そして、WILLCOOKシリーズの第3弾製品として、2WAYタイプのバッグ「WILLCOOK PACKABLE(ウィルクック パッカブル)」のプロジェクトをMakuakeで開始した。WILLCOOK PACKABLEの開発背景や今後の展開について、WILLTEX 代表取締役である木村浩氏と、同 CTOの上田彩花氏に話を聞いた。
――まずはWILLCOOKシリーズの概要を教えてください。
上田彩花氏(上田氏) WILLCOOKシリーズは「持ち運べる電子レンジバッグ」をコンセプトにした製品です。HOTPIAを搭載しており、モバイルバッテリーの電力を使って内部の食材や飲料を温めることが可能です。
温かいペットボトル飲料なら50℃を2時間キープできますし、WILLCOOK PACKABLEであれば常温のレトルト食材を20分で人肌程度の温度に加熱できます。外出先でも手軽に温かい食事や飲み物をとれるようになります。
スマートフォンの専用アプリ「HOTOPIA PREMIUM」を通じて温度調節も可能です。またバッグのポケット内にはアルミニウムのシートが入っており、高い保冷力も備えています。バッテリーをセットしない状態で簡単な保冷バッグとしても使用できます。このアルミニウムは加熱時に内部を高温をする上でも役割を果たしています。
木村浩氏(木村氏) 一般的に「ヒーター」と聞くと、電熱線を使ったヒーターが思い浮かぶかと思います。HOTPIAには電熱線は使っていません。肌着のように伸び縮みする銀製の伸縮電線のため、通常の布と同じ柔軟性や軽量性を持ちながら、導電によって素早く均一な温かさを実現できます。この点が画期的なところです。
布自体が発熱するので、面全体で発熱させられますし、好きな形状に加工もできます。バッテリーとHOTOPIAをつなぐ電線も、導電繊維を使った布製伸縮電線(特許取得済み)で、バッテリー以外の部分は全て布です。布だけれども電化製品という、これまでにない製品です。
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