東北大学は、二酸化バナジウムの薄膜における水素の拡散運動を原子レベルで解明した。室温付近で電気抵抗が大きく変化する特性から、次世代半導体デバイス材料として注目されている。
東北大学は2024年3月5日、二酸化バナジウム(VO2)の薄膜における水素の拡散運動を、原子レベルで解明したと発表した。茨城大学、高エネルギー加速器研究機構、物質・材料研究機構との共同研究による成果だ。
VO2には、室温付近で電気抵抗が大きく変化する特性があり、次世代半導体デバイス材料として注目されている。この特性にはVO2中の水素が関わっているが、厚さ10ミクロン程度の薄い膜の中に含まれる微量の水素の振る舞いを観察することは困難だった。
研究グループは、大強度陽子加速器施設(J−PARC)でミュオンスピン回転、緩和、共鳴(μSR)実験を実施。大型加速器施設で照射する素粒子のミュオンは、物質中の電子を捕獲し、水素と同様の構造を持つミュオジェンを形成するため、擬水素として観察に用いることができる。
実験の結果、VO2中における水素が格子間拡散と空孔媒介拡散の2種類の拡散経路を有し、温度によってその割合が変化することが判明した。室温付近における格子間拡散の拡散係数は毎秒10−10cm2で、半導体素子に適した水準であることを示した。
VO2中の水素の制御により電気抵抗をコントロールできることから、電気抵抗の変化を利用してデータを記憶する、抵抗変化型メモリ(ReRAM)への応用が期待される。
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